債券ファンド主催の座談会とあって、毎年、能天気な発言はほとんど聞かれない。
しかもこの数年、経済システムにおける債務膨張が甚だしい。
自然と危機感の滲む話が多くなる。
(米国の日本化が感じられ興味深い。)
いらだちを隠さないガンドラック氏の発言をいくつか紹介しよう。
インフレのリスク:
「この20年私が言ってきたのは
米国ではインフレは起こらないという議論を却下する
ということ。
人口動態ほか様々なことについて多くの議論がなされてきたが、私は『今日5時にインフレになる可能性だってある』と言ってきた。
ありうるんだ。
・・・
みんなが驚くほど忘れているのは
インフレが貨幣的現象で、突如としてインフレ率が2、3、4%でなくある月9.1%になるということだ。」
政府のリファイナンス:
「今後36か月で17兆ドルの米国債が償還を迎える。」
政府の利払い費の急増:
「景気後退が来れば(財政赤字が)GDPの12%にもなると信じる根拠が多く存在し、それは保守的な見積もりでさえない。
・・・
金利が6%程度になっていると仮定すると、税収の8割が利払いで消えることになる。
これは不可能だ。」
FRBはインフレをかまっていられなくなる:
「ジェローム・パウエル議長が考えているであろうことの1つは
『インフレ目標を教条的に考えるべきでないかもしれない。
金融システム全体のソルベンシーを考えるべきかもしれない。』
ということだ。」
FRBの建前が意味すること:
「『より高くより長く』が意味するのは金融システムの破綻だ。」
社会保障削減の必要性:
「私たちは負債をリストラしなければならなくなる。
それが今後5年のストーリーになるだろう。」
古き米社会にあったモラル:
「私は社会保障なんていらない。欲しくない。
私の祖父は、この揺りかごから墓場までの政府のありように大反対だった。
給付の小切手が送ってきても現金化しなかった。
彼は貧しかったんだよ。
貧しい貧しい中流階級の話なんだ。
彼らは社会保障の小切手を現金化しなかった。
それを不道徳と考えていたんだ。」
米財政問題が表面化するのはいつ:
「議会予算局(CBO)の仮定は馬鹿げている。
財政赤字が今より減る、金利が今より下がる、景気後退はもうやってこない、としている。
その仮定で社会保障制度が2032年まで、メディケアは2030年までに破綻すると言っている。
・・・2032年は現実より遅い。・・・私は2027年と言いたい。・・・5年後だ。
これは孫の問題でも子供の問題でもなく私たちの大問題なんだ。」
ガンドラック氏がベア派であるのは間違いないし、同氏自身が「そうなるまでに予想よりずっと長い時間がかかる」との一般論を述べている点にも注意したい。
しかし、こうした話を聞いていると、現在大はやりの米国投資について不安を感じざるをえない。
(この議論は米ドルの価値と密接な関係にある。)
素人が安易に飛びついて、老後の資金を減らさないか心配だ。
仮にそうなれば、結局は社会保障の負担を増やすことになってしまう。