Exclusive 海外経済 投資

【グラフ】米2年債を買え:ビル・グロス
2024年7月12日

ビル・グロス氏が、イールドカーブ逆転の縮小を指摘し、長期債を避けるよう奨めている。


イールドカーブの逆転が縮小している。

グロス氏が昨日ツイートした。

イールドカーブの長短逆転は、言うまでもなく、米景気後退の前触れだ。
(ただし、騙しも多い。)
逆転し、正転し、景気後退が訪れる。

米2年10年スプレッド(グレーが景気後退期)
2年10年スプレッド

ところが、今回の逆転は異例に長く続いている。
これほど長く逆転したままのなのはボルカーショックまで遡る。
通常より高いインフレの時期という点で共通している。

米国債の2年/10年イールドスプレッドは現在-0.31%。
FRBが利下げすれば-0.10%に向かうだろう。

2年/10年スプレッドがゼロ未満に沈んで約2年経った。

米2年10年スプレッド(過去5年)
2年10年スプレッド(過去5年)

言うまでもなく、要因はFRBの急激な利上げだ。

米2年10年スプレッド(青)、FF金利(赤)、10年債利回り(緑)(過去5年)
2年10年スプレッド(青)、FF金利(赤)、10年債利回り(緑)(過去5年)

FRBがFF金利を引き上げると、2年債利回りが強い影響を受け、長短スプレッドがマイナスに沈む。
金融引き締めはインフレを抑制するとともに景気を抑制する。

今回、長短逆転が長く続く背景には、景気サイクル終期の債務のありかがあるとの説がある。
通常なら民間のレバレッジが高まっているはずなのに、トランプ政権の財政刺激策、パンデミックでの財政出動により、民間のバランスシートは(局地的例外を除き)健全だ。
サイクル終期につきものの債務を政府が肩代わりしているのだ。
だから、異例に急激な利上げでも景気(や需要サイドによるインフレ)にブレーキがかかりにくかった。
しかし、民間もついにタナボタの《貯金》を使い尽くしつつある。

温故知新なら、ボルカーショック時のことを知りたいはずだ。
当時慢性的な高インフレに苦しんでいた米経済は、ポール・ボルカーFRB議長(当時)の荒療治によりインフレを脱し、その後の米経済・市場は1つの黄金期に向かっていく。
しかし、当時との比較は容易ではない。
そもそも金融政策のレジームからして今と同じとは言えない。

米2年10年スプレッド(1978-82年)
米2年10年スプレッド(1978-82年)

米2年10年スプレッド(青)、FF金利(赤)、10年債利回り(緑)(1978-82年)
米2年10年スプレッド(青)、FF金利(赤)、10年債利回り(緑)(1978-82年)

グロス氏は最近まで債券ファンドを買うなと言っていた。
ボルカーショック、いやボルカー戦役が繰り返すなら、債券利回りは低下(価格は上昇)するはずなのにだ。
グロス氏の現在の推奨はこうだ。

10年債や30年債ではなく、2年債を持て。

債券は短かいデュレーションだけを推奨している。
FRB利下げが近づいたと感じられ、その恩恵を確実に享受できるデュレーションだ。
逆に言えば、長デュレーションは避けろということ。

米インフレに鎮静化の兆しが見えてきた。
供給サイドのインフレが一服し、再びディスインフレの力が働くとの期待感だろう。

1980年頃との違いは何か。
おそらくは米政府の財政だ。

米連邦予算対GDP比率
米連邦予算対GDP比率

財政赤字が比較的少なく、米財政は2000年頃(ITバブルの頃)にかけて黒字化に向かう。
その後のチャートはトレンド転換を疑わせる形状だ。
財政の限界がどこにあるか予見はできないが、余地が減っていることは間違いなさそうだ。
これが1980-2000年との大きな違いだろう。


-Exclusive, 海外経済, 投資
-, ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 本サイトでは、オンライン書店などのアフィリエイト・リンクを含むページがあります。 その他利用規約をご覧ください。