益回りの話題が上がったので、国別の益回りスプレッドとリスクプレミアム推計をアップデートしておこう。(1月27日 浜町SCI)
(一部データを2024年10月のIMF見通しに依存している。)
投資家が株価指数等の将来の実質リターンを予想する際に使うことがあるのが益回りだ。
益回り = EPS÷株価 (PERの逆数)
で定義される。
PERが小さければ益回りは大きくなり、将来リターンが高いとの予想になる。
益回りが示唆するのは、将来の実質リターンであることに注意する。
1) 各国・地域の代表的な株価指数を選定。(もっとよい選択肢があるなら、書き換えるとよい。)
2) それぞれの株価指数の過去10年のリターン、実績・予想PERをリストアップ。
3) 予想PERから益回りを計算。
益回りは国によって差があるが、そもそも国あるいは通貨によって金利水準に差がある。
金利の差にも、それ以外の要因にも意味がある。
金利はリスクフリー金利で代表させる。
さらに各国の益回りスプレッド(場合によりイールド・スプレッド)を
益回りスプレッド = 益回り – 実質リスクフリー金利
で定義する。
4) リスクフリー金利の代用として10年債利回りを用いる。
(国によっては国債はリスクフリーではないと考える人は、適宜納得のいく数字に置き換えるとよい。)
5) IMFによる今後5年間のインフレ率予想、さらに5年は最終年から横ばいと置いて、今後10年のインフレ予想を計算。
6) 4から5を引いて、実質リスクフリー金利を計算。
(もちろん6の代わりに物価連動債利回りを使ってもよい。)
7) 益回りと実質リスクフリー金利の差を求める)。
(ここでは、益回りからリスクフリーを引いている。逆に差引することもある。)
この益回りスプレッドは何を意味するのか。
1つの解釈は、益回りが将来リターンの予想だとして、この予想に内包されている株式リスクプレミアムと見る、というものだろう。
下表では、益回りスプレッドとアスワス・ダモダラン教授がソブリン格付から推計した株式リスクプレミアムとを比較している。
大きな差があるが、この差は、株価に内包されているスプレッドとリスクから積み上げで計算したスプレッドの差である。
ダモダラン教授は、ソブリン格付とデフォルト・スプレッドを用いて株式リスクプレミアムを推計している。
こうして推計された株式リスクスプレッドとは、株式のリスクに見合う追加的リターンという意味合いだろう。
つまり、株式投資家がリスクフリー資産でなく株式に投資するにあたって要求すべき追加的リターンという意味合いだ。
2つの株式リスクプレミアムを比べてみる。
益回りスプレッドは《これだけ余分に儲かるかもしれない》という数字。
ダモダラン教授のリスクプレミアムは《これだけ余分に儲けなければいけない》という数字。
前者が後者より大きい方がよいことになる。
ただし、そもそも仮定に仮定を重ねた荒い推計なので、精度のほどは保証できない。
考え方が気に入ったなら、自分なりに精度を上げる工夫をするといいだろう。
国別株価指数の益回り、リスクプレミアム、資本コスト