アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が《押し目でMag7を買え》と話したと報じられている。
実際の話しぶりを確認しておこう。
2008年以降の出来事を振り返れば、2-3年ごとに大きくグローバルな出来事があった。
私はそれを織り込むべきだと思う。
市場が織り込んでいないのは、少し問題だ。
ダモダラン教授がBloombergで、米市場に調整が近づいていると語った。
現在、米市場は危機のない完璧な未来を前提とした株価が付いているといい、2023-24年はその状態が続いてきたという。
教授は、来年にかけて何かが「修正」されると覚悟すべきという。
ダモダラン教授は、相場を2つに分類する。
- 値付けゲーム: トレーダー主導のムードやモメンタム重視の相場
- 投資ゲーム: (長期)投資家主導のファンダメンタルズ重視の相場
ダモダラン教授によれば、現在は値付けゲームであり、トレーダーは本音ではファンダメンタルズを気にしない生き物と、事もなげにディスっている。
《バリュエーション学長》の異名をとるとおり、教授はファンダメンタルズに基づく価値評価を丁寧に続けてきた人物だ。
一方で、計算結果として得られた価値に縛られるような学者でもない。
自身が向き合ってきた市場というものの性質を熟知し、そこで実際に結果を出すことを重視している。
だからと言って、株を売って避難しろと言うわけではない。
ダモダラン教授は、マグニフィセント7やFAANGなど少数の銘柄がこれほど長く市場を牽引するのは史上初めてのことと話す。
それが値付けゲームによる株価上昇であることも認めている。
しかし、それでも売ればいいとは言わない。
1つには、いつも教授が言っているように、高いから投資しなければ(長い強気相場などで)結局投資できないで終わってしまうからだろう。
投資とは、投資しなければ始まらない営みだ。
今回は別の理由を挙げている。
「ムードやモメンタムがある時、しばしば現実に基づいていることがある。
今回の場合、これら企業が特別な企業ということだ。
単に売上や成長を拡大できるだけでなく、数社は狂ったように利益率が高い。」
ダモダラン教授は、営業利益率60%のNVIDIAを筆頭に、これら銘柄がATMのようにキャッシュを生んできた点に注目している。
ムードやモメンタムはこの点に根ざしており、そこには一理あると考えているのだ。
私にはこのATMが鈍化するとは思えない。
値付けは制御を失うかもしれないが、これらは世界最高の企業群として値付けされるにふさわしい企業群だ。
少し整理しよう。
「値付けは制御を失う」とは、ムードやモメンタムによる押し上げ部分が剥落しうるということだろう。
言い換えれば、バリュエーションは調整しうる。
一方、これら企業が生み出すキャッシュフローは(少なくとも相対的には)鈍化しにくいという予想だ。
ダモダラン教授の2つの発言(調整が来る。鈍化しない。)を切り貼りして、一部メディアはダモダラン教授が《押し目でMag7を買え》と話したと報じている。
ダモダラン教授は、従前どおり、AI関連銘柄について至極常識的で冷静な見方を語っている。
NVIDIA株価はAI市場の膨大な成長期待を織り込んでいると指摘。
その試金石がNVIDIA自体ではなくそれを使って商売する顧客企業の成功いかんにあるという考えだ。
NVIDIAは(AIの)アーキテクチャーを確立するだろうが、最終的にはそれは他の企業、4大テック企業のコストになる。・・・
現在、AI製品やサービスで実際にお金を稼いでいる企業は1社もないと思う。
約束され、可能性を備えているが、これら製品・サービスがアーキテクチャーのコストを賄えるほどマネタイズできるかはわからない。