アリアンツ主席経済顧問モハメド・エラリアン氏は、金価格上昇の背景に米国にとって極めて深刻な問題が存在すると指摘している。
「金の件はとても重要だ。・・・
みんな準備通貨としてのドルから退避することはできない。
しかし、みんなゆっくりと2つのことをやりだした。」
エラリアン氏がBloombergで、最高値更新中の金相場について語った。
同氏が言及した2つのこととは
- 米ドルを迂回する方法の模索
- 米国・米ドル以外の資産配分の拡大
金は後者の選択肢の1つとして上昇を続けているとの見方であり、これは(少なくとも一面の)コンセンサスと言ってよいだろう。
エラリアン氏は、金の他にも近年急速に暗号資産が機関投資家に受け入れられてきている点を挙げている。
同氏は、金などの上昇が継続するなら、投資における「過去からの相関関係を破壊」しかねないと心配する。
むろん、ドルもその相関関係の重要な要素であり、米政府は現状を「極めて深刻に受け止めるべき」という。
エラリアン氏は従前から米国例外主義の継続を予想してきた人物。
その人でさえ、米国・米ドルについてのリスクシナリオを否定しない。
家計・企業・政府系ファンドもすべて他の選択肢を探していると言い、選択肢となる他通貨が存在しないためにシナリオ進行がゆっくりで済んでいるだけだという。
そして、ゆっくりだからといって安心もできないという。
でも、どこに臨界点があるのかはわからない。
米国はそれに注意しないといけない。
かつてと比べれば、この世界には強いディスインフレ要因が増えているのだろう。
だから、インフレについて《昂進》というほどの危機感は感じられない。
2%インフレ目標に対し実績が仮に3%前後なら、みんな物価上昇を嘆き、実際に苦しむのかもしれないが、ほとんどの家計・企業にとって耐えきれないほどの高インフレではあるまい。
だから、その程度で済むならば(金融政策はやりにくいだろうが)インフレそのものだけで致命的とまでは言えない。
しかし、日本人は今いやというほど思い知っている。
仮に米ドルが趨勢的に下落するようなら、その時はインフレが《昂進》の域に達するかもしれない。
慢性的なドル安で関税の議論など吹っ飛んでしまうだろうが、逆に家計は輸入インフレに苦しみ、米経済の屋台骨である消費は甚大な悪影響を被るだろう。
それこそ今本当に心配されているスタグフレーションのリスクなのだろう。