アリアンツ主席経済顧問モハメド・エラリアン氏は12日の米CPIを受け、FRBの利下げ停止が長く続くとの予想を述べている。
一部の市場セグメントでは(金利上昇が)始まるだろうが、FRBでは(利上げは)始まらない。
何度も言ってきたが、もしもFRBのインフレ目標が本当に2%なら、利下げ延期だけでなく利上げを考えなければいけないはずだ。
エラリアン氏がBloombergで、12日の米CPIとパウエルFRB議長の議会証言についてコメントした。
コアCPIが+3.3%となっている中、パウエル議長は「利下げを急がない」と発言している。
エラリアン氏は、FRBが2%インフレ目標の達成を急いでいないと解釈している。
1月の米CPIは
- コア: 前年同月比+3.3%(市場予想+3.1%)
- 総合: 同+3.0%(同+2.9%)
と市場予想を上回った。
エラリアン氏のCPIに対する着目点は次のとおり:
- FRBのシグナルより高く、さらに上昇中。
- 他の経済データと整合的。
- 企業等が金利に敏感になっているとの仮説とも整合的。
エラリアン氏は、米インフレが2%目標への軌道に乗ってないと見ているのだろう。
同氏は(キャスターによる誘導尋問に答え)FRBの政策運営を批判している。
「私は現在のFRBには(経済・市場を)アンカーしようという戦略がないと信じている。・・・
FRBから意味のある政策のフォワードガイダンスがない。
これは大きな誤り。
・・・FRBがさらにボラティリティを高めると見るべきだ。」
FRBは「データ次第」とのスタンスを強調し、インフレ上昇時にも後手後手に回る局面が見られた。
インフレや金利に対する期待をアンカーしようとせず、経済データの変化に応じて政策調整をするため、それがボラティリティを高めてしまうとの指摘だ。
エラリアン氏は、FRBの姿勢を批判する一方で、好意的な解釈もしうるとのニュアンスも含めている。
FRBが米経済の構造変化を認識し、言葉には出さないが、インフレ目標の達成を長期化しているとの解釈だ。
エラリアン氏は、米経済が構造的変化を遂げたと考えている。
不意のインフレに対し敏感に反応できなかった2021年とは異なる状況だとし、早期の2%に固執して引き締めを急げば経済・市場が動揺すると考えている。
同氏は、高めのインフレでも経済がよい状態にあるため、インフレ期待が安定している限りにおいてFRBが高めのインフレを許容することを望むと述べている。
エラリアン氏は「FRBの停止ボタンは市場が考えるよりはるかに長くONのまま」と予想している。
エラリアン氏は、中立金利について尋ねられると次のように答えている。
「米金利はかなり中立金利に近く、すでに中立に達しているかもしれない。
米経済は過去10年とは構造的に変化し、供給側が根本的に変化している。」
つまり、仮に利上げとなれば、金利感応度の戻っている米経済にブレーキがかかるとの見立てだ。
市場関係者を怯えさせた2022年からの急激な利上げでは、予想に反して経済にブレーキがかからなかった。
しかし、今後は同じことを望めないというのだろう。
かつてPIMCOを率いたエラリアン氏は、債券市場の見通しを尋ねられ次のように答えている。
- 短期側: 予想しやすい。しばらく利下げが停止になるとの期待に沿った変化。
- 長期側: 読みにくい。規制緩和・財政・貿易・移民ほかの要因の綱引き。
短期金利は横這い中心、長期金利は状況次第で上下いずれもありうるとの見方だろう。