ウィリアム・ダドリー 元ニューヨーク連銀総裁が米雇用統計発表の直前に、従前からの米経済見通しを撤回した。
「私はストーリーは正しく予想していたんだけど、結論は的中しそうにない。
まだ確実視するのは早いし、だからこそ労働市場がこんなに注目されている。」
ダドリー氏がBloombergで、これまでソフトランディングはありそうにないとしてきた考えを撤回した。
同氏が苦笑いしながら降参すると、Bloombergスタジオから笑いが沸き起こった。
実際、ダドリー氏はパンデミック後の経済・金融政策のストーリーを正しく予想してきた。
FRBは金融引き締めで出遅れ、経済が過熱、インフレが昂進し、FRBが大幅利上げに踏み切り、雇用が悪化し、サーム・ルームのトリガーが引かれる。
まさにその通りになった。
ところが、結論だった景気後退だけは実現していない。
同氏は今回、景気後退を招くことなくインフレを制御できる確率が高まったと考えを改めている。
米経済見通しのコンセンサスがソフトランディングだったとすれば、ダドリー氏はこれまで弱気派だった。
9月のFOMCの1週間前までは25 bpの利下げを予想していたが、直前になって50 bpが必要だと話していた。
ここまでは同氏は弱気だった。
しかし、3日のBloombergへの寄稿では4つの理由を挙げてソフトランディング予想を支持する考えを示している。
- 経済: 実際に堅調が続いている。
- 雇用: 労働参加率上昇で実態より悪く見えているが、悪くない。
- サーム・ルール: 1960年以降の経験則に過ぎない。
- 金融環境: 金融引き締め下でも市場は自主的に緩和した。
ダドリー氏は現状のリスクの所在についてFRBの考えに同意している。
主たるリスクはインフレではなくなり、雇用に移ったという見方だ。
このため、4日の雇用統計が注目されると話したが、一方で誤差の多い統計であることにも注意すべきと述べている。
ダドリー氏は、ソフトランディングが株式に有利、債券に不利に働くと予想する。
ソフトランディングは中立金利上昇を示唆するものとし、企業業績の向上、債券利回り上昇を意味するとの見方だ。
同氏は、米10年債のフェアバリューの利回りを4.5%と見ている。
(3日の同利回りは3.85%。)
分解するとインフレ平均2.5%、実質中立短期金利1%、タームプレミアム1%だという。
ダドリー氏は番組で11月FOMCでの利下げを25 bpと予想。
FRBが将来の不可知な出来事(大統領選とその後の政治)を勘案することはないと説明した。