海外経済 国内経済 投資

【短信】ドルキャッシュはゴミじゃない。まあまあ:レイ・ダリオ

ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、現状の米金利の水準についてコメントしている。


(インフレが)例えば2.5%±0.5%として、これに2.0%または1.5%を足すと現在の(名目)金利になる。・・・
米国債利回りは、もはや大きく逸脱した水準ではない。
実質金利が大きくマイナスだったり大きくプラスだったりした時とは異なる。

ダリオ氏が、米国債利回りについて異常な状態ではないと語った(Bloomberg報)。
市場金利は均衡水準から大きく逸脱していないとする一方、これに債券需給が効いてくると予想している。
米国を始め世界では債券が増発(債務が増加)される要因が多く見られ、債券を保有したいという需要が不足するかもしれないと説明した。

ダリオ氏は現状の短期的見方として、経済成長とインフレについてやや強気の見通しを持っている。

「利下げはさほど大幅には進まないだろう。
現在の経済は概してよいバランスにあり、経済成長やインフレ等、選挙の年であることも考えれば、市場は利下げ幅を過大に見ている。
リスクは下方より上方に大きい。」

仮にFRBが大幅に利下げをすれば債券需要が低下すると、ダリオ氏は心配する。
同氏は、債券が売られるとか、買われないとか、金利が上昇するとかいった直接的な言葉は避けていたようだが、そうした方向性を強く滲ませている。
少々の利下げでイールドカーブは順イールドになるとしたものの、大幅な利下げは債券需給を揺るがすとダリオ氏は心配する。
債券が下落すれば、それを支えるためにFRBは利下げまたは量的緩和への逆戻りを迫られかねないという。

ともあれ、米国の「現金」(金利付きの短期運用)や債券の市場は現状そこそこ正常であるようだ。
かつて現金や債券をゴミと呼んだダリオ氏も、今は異なる見方をしている。

「私が『現金はゴミだ』と言ったのは、(名目)金利が実質ゼロ、実質金利が-1.5%の時で、明らかにゴミだった。
(FF金利が)5.5%になり、イールドカーブが大きく逆転した時には、現金はとても魅力的と言っていた。
・・・今はまあまあ。
ゴミではないが、税引後リターンはさほど魅力的ではない。」

ダリオ氏はポートフォリオの分散のために必要最小限な債券を保有しているが、債券市場には金利リスクがあると警戒している。
相対的には株式有利と見ているが、それも限定的。
「株式は全体で見ると概してよりよいが、買われている株式が集中している」とし、投資先の厳選が重要と暗示している。

ダリオ氏は、かつての異常に低い米国債利回り、それに回帰するリスクについて、日本国債を例に説明している。

債務が莫大にあり増えていくサイクルでは・・・(債券)供給を急激に増やすことになる。
日本のように、リフレのためにインフレ率や名目成長率よりも低く金利を抑え、政府(訳注:中央銀行のことと思われる)が買い入れれば、債券の価値が低下する。
これら債券は米債との比較で、過去15年間の保有で・・・約90%も価値を減じた。
米国債もたいした投資ではなかったのにだ。

日本は物価が水面上に出ている時期も一貫してゼロ金利・超低金利を維持し、金融抑圧の状況が続いてきた。
この間、円建ての実質リターンがマイナスの状態が続き、それゆえに円安も進んだため、日本国債の実質的な価値は米国債との比較で大きく低下した。
絶対的(円で見た場合)にも相対的(米国債と比べた場合)にも減価したというべきだろう。
これはもちろん円の現預金にも言えるし、たいしたスプレッドが乗っていなかったフィクストインカムすべてに言えることだった。
インフレが高まるにつれ、ようやく多くの日本人がこの状況に気づき行動を始めているのかもしれない。


-海外経済, 国内経済, 投資
-, , ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 本サイトでは、オンライン書店などのアフィリエイト・リンクを含むページがあります。 その他利用規約をご覧ください。