モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏は、当面有望なセクター/ファクターを高クォリティのディフェンシブまたはグロースと話した。
さらに、いつまで高クォリティに留まるかについても話している。
「年初の予想時でも私たちは関税ばかりに注目していない。
経済成長にとって向かい風になるだろう他の要因がとても多く存在するからだ。」
ウィルソン氏がBloombergで、米市場の年前半の逆風について指摘した。
同氏は年初、今年の米国株市場について前半を低迷、後半を回復と予想していた。
政権発足後まず短期的に経済成長にマイナスとなる政策等(関税やDOGEなど)が続くと見ていたからだ。
その後、経済成長にプラスの政策等により株価が回復するとして、年末のS&P 500目標株価を6,500と予想していた。
現在もウィルソン氏は同目標株価を維持しているが、達成時期については前後しうるとも話している。
政権移行時、投資家はあまりにも期待しすぎたとウィルソン氏は回顧する。
みんな政権の経済成長志向の戦略に興奮しすぎた。
でも、需給ギャップを考えれば不可能で、これが第1次政権とは異なるところだ。
第1次政権時には経済のいたるところにたるみがあったが、今回はない。
経済の供給力に余力がない時、需要を喚起してもしかたがない。
需要は輸入に吸収されていくだけで、国内経済を潤さない。
ウィルソン氏は、この観点からトランプ政権の政策を支持している。
先に需要を喚起するのではなく、先に景気に逆風となるような政策がとられ、そして供給力を高める政策がとられると期待されているからだ。
結果、短期トレーダーにとっては、年前半が逆風、その後順風が予想できるというわけだ。
弱気派で知られるウィルソン氏だが、米景気のハードランディングは予想していないという。
ただし、そのリスクが増大している点は認めている。
ハードランディング確率は年初の10-20%から30-35%へ上昇したと話している。
ウィルソン氏は、自身のスコープが戦術志向である点を認めている。
顧客の多くが長期投資でなく短期トレードの情報を欲しがっているからだ。
同氏は今月半ば、S&P 500が5,500近辺で底を打ったと予想した。
今後の予想を次のように語っている。
「5,900まで上昇するかもしれないが、新高値を付けるとは思わない。・・・
企業利益が底を打つだけでなくプラス圏に戻るまでは新高値はないだろう。」
今回の出演で興味深かったのは、ウィルソン氏が何度かハードランディングのシナリオに触れたことだ。
その確率が高まっているとの認識の表れだろう。
同氏は、このリスクシナリオに進んだ場合の立ち回り方も話している。
「本当にハードランディングがやってくる場合、それがコンセンサスになったら、まず買うべきは市場で最も質の低い銘柄だ。
消費財など、もっとも売られていて、レバレッジのかかったバランスシートの悪い企業だ。
素材セクターやエネルギー株かもしれない。」
ハードランディング予想がコンセンサスになったら、景気後退に弱い、質の低い銘柄が大きく下落するから、それを買えというのだ。
経済が反転した時に株価が最も大きく上昇するだろうとの考えである。
ただし、足下はまだそのタイミングではない。
ウィルソン氏によれば、企業はインフレを価格に転嫁するのが難しくなってきているものの、大手テック企業に見られるような独占・寡占企業群はまだ健在だ。
だから、私たちのポートフォリオの中心はまだクォリティ・ディフェンシブとクォリティ・グロースだ。
それは次の2つのうちのどちらかが実現するまで続く:
あらたな成長ドライバーが現れるなど外生的に経済成長が加速するか、あるいは、ハードランディングが起こるかだ。