ブリッジウォーター・アソシエイツのカレン・カーニオルタンブール氏が、昨年2024年の稼ぎ頭、今年2025年の米国株、為替、金について語った。
驚くだろうが、ダントツで効いたのは中国だ。
カーニオルタンブール氏がBloombergのインタビューで、2桁リターンとなった2024年の要因について明かした。
(S&P 500が23%上昇した年に2桁リターンが成功と言えるのか、と思う読者もいるだろう。
ピュアアルファ戦略やオールウェザー戦略での2桁リターンはリスク低減後のリターンであり、リスク調整後で見れば成功と言いたいのだろう。)
ブリッジウォーターが中国に強いのは以前から知られていたこと。
いち早く中国に注目し、ヘッジファンド最強のフランチャイズを築いた。
中国が外交上非難されても、中国経済が不振に陥っても中国にコミットし続け、それがゆえに批判を受けることもしばしばだ。
しかし、中国の市場・経済が深刻な不振を極める中で、中国が稼ぎ頭だったとはどういうことだろう。
そこには何とも皮肉な答えがあった。
元建てでのコモディティ等実物資産の保有、債券保有、為替。
つまり、中国が不振で、現安・金利低下が進んだことで儲かったということのようだ。
2025年について、カーニオルタンブール氏は昨年ほどの期待はしていないようだが、それでも中国が投資分散に役立つと強調した。
中国市場の投資家は、比較的均一な西側の投資家と異なる挙動を取ることが多いためだ。
一方、米市場について、カーニオルタンブール氏は「価格を見ていなければかなり素晴らしい時期だ」と話している。
逆に言えば、諸条件はよいものの価格が少々高すぎるということだろう。
債券と株式がリスク調整後で釣り合うためには「9.5-10.0%ほどのEPS成長が必要」で、不可能ではないものの「驚くべき時期」にはならないと予想した。
外国投資にともなう為替リスクについて尋ねられると、カーニオルタンブール氏はメリハリの効いた答を返している。
ドルにはまだ上昇余地があり、次に有望な通貨が円だと予想しつつ、慎重なアドバイスをしている。
為替リスクは、報われることのないリスクだ。
だからまず、そのエクスポージャーを望むのでない限り、ヘッジすることを考えるべきだ。
まだドル高の余地が残る中では(米投資家にとって)為替が有利に働くと軽々に見込むべきではないとの考えだろう。
インフレヘッジの手法について尋ねられると、カーニオルタンブール氏は、金がインフレと地政学リスクの両方への優れたヘッジになるとの考えを示した。
金は、創業者レイ・ダリオ氏をはじめブリッジウォーター幹部が口を揃えて言及する資産クラスだ。
カーニオルタンブール氏は、地政学的リスクへのヘッジについて、ドルではなく金の方が有効である理由を述べている。
「ドルの需給を動かすことは極めて難しい。・・・
しかし、金市場を動かすのはとても容易だ。・・・
金は、政治化されることのない数少ない選択肢の1つだ。
ここに物理的な棒を持つだけだからだ。」
リスクヘッジとして効果を発揮するには、リスクの大小でより大きく価値が変動してくれることが望ましい。
また、保有や取引が自由であることも重要だ。
その点で金に優位性があると言いたいのだ。
さらにカーニオルタンブール氏は、インフレヘッジがそう容易ではないとの実情も示唆している。
総じて言えば、優れたインフレヘッジはそう多くない。
みんな自分のポートフォリオの中でどれが本当にインフレヘッジになるか自問してみるとよい。