最近しばしば米メディアで見かけるようになった言葉に「マールアラーゴ合意」という言葉がある。
クリントン政権で大統領経済諮問会議委員を務めた、ハーバード大学ケネディ・スクールのジェフリー・フランケル教授が、この言葉の意味・含意を解説している。
フランケル教授の解説を読む前に、まず「マールアラーゴ合意」の文字通りの意味を知っておこう。
マールアラーゴはフロリダの高級リゾート地 パームビーチにある米国の国定歴史建造物で、現在はドナルド・トランプ大統領の私邸(別荘)になっている。
いわゆるウィンター・ホワイトハウスとして、しばしば首脳会議がマールアラーゴで開かれている。
建造物+合意という組み合わせについて言うなら、他にもプラザ合意、ルーブル合意が挙げられ、いずれも米ドルをはじめとした為替相場に関する協定だ。
前者はドル高の是正、後者は行き過ぎたドル安にブレーキを踏むことを取り決めたものだ。
最近「マールアラーゴ合意」という言葉がよく聞かれるようになったのには、大統領経済諮問会議委員長に就任したスティーブン・ミラン氏が昨年ヘッジファンド時代に公表した「世界の通商システムのリストラのためのガイドブック」の存在がある。
同氏の認識とは
「経済的不均衡の原因は持続的なドルへの過大評価にあり、それが国際収支の均衡を妨げている。
この過大評価は、準備資産の非弾性的需要によって引き起こされている。
世界のGDPが増大するにつれ、準備資産や軍事の傘の供給のための米国の資金調達はどんどん困難になっており、製造業や貿易可能セクターがそのコストをもろに負担させられている。」
「ガイドブック」は、この状況を解消する手段を提案したものであり、主要な手段として関税が提案されている。
さらに、同盟国に対し、軍事協力の見返りに米100年債保有を求めるアイデアなどにも言及している。
いずれもパートナーに(少なくとも一部)負担を強いるものであり、特に後者についてはあからさまに同盟国に経済的負担を負わせるものだ。
ミラン氏が経済諮問会議委員長に就任したことで、こうした乱暴なアイデアが現実のものとならないか心配されているわけだ。
昨今の投機筋によるドル・ショート転換もこうした状況に反応したところがあるのだろう。
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