海外経済 投資 政治

米ドル 【短信】マールアラーゴ合意は米国を凋落させる:ジェフリー・フランケル

ジェフリー・フランケル教授はProject Syndicateで、まず検討すべき道を示唆している。


「主要経済間でのドルを弱くするための協調介入という分別ある提案も考えられよう。
米国は財政赤字縮小を進め、ドイツ等の貿易黒字の大きな国は財政赤字を拡大し、今日の国際貿易の不均衡の根本的原因に対処しようとするものだ。・・・
しかし、マールアラーゴ合意は、そうしたことをしていない。」

フランケル教授は、米国が諸外国との間で協調して根本的な原因に対処しようとせず、対立を先鋭化させて状況を有利にしようとしている点を問題視している。
こうしたアプローチが、米国の資金調達能力を弱め、米ドルの基軸通貨としての地位を危うくすると書いている。

  • 外国中銀によるドル売り介入: 米国債価格が下落、金利が上昇。経済の需給が均衡する中で貿易収支を改善させると内需がクラウディング・アウトされる。
  • 米ドル: 準備通貨としての地位を低下させる。
  • 100年債: 諸外国が交換・保有に応じる可能性は低い。

フランケル教授は、トランプ政権が関税や軍事協力を盾に他国にディールを仕掛けるつもりだと推測する。
一方で、同盟国でさえ、米国の周りから去り始めているという。
理由は「善意」の欠如だ。

脅迫・強制の傾向、友人・同盟国を平気で裏切ること、規則・規範の無視によって、トランプは自身が継承した国際政治資本を系統的に破壊し、その過程で世界における米国のリーダーシップを損じてしまった。
強制的なマールアラーゴ合意は、ローマ帝国がその軍隊の占領した領土から税を要求したことを想起させるが、米国の凋落を加速させるだけだ。

こんなことが真剣に明示的に議論されていることに驚く読者もいるかもしれない。
マールアラーゴ合意とはそんなに差し迫った予想だったのか。
道理で金や軍事関連株が上がったりするわけだ。
また、ドル相場、金、暗号資産に対するトランプ政権の意向がこんがらがっているように見えるのも頷ける。
実現の可否はともかく、遠い話だと安心しきってしまわない方がよさそうだ。

プラザ合意、ルーブル合意との比較で言えば、今回米国が本当にドル安を求めているなら、日本にとっては1985年のプラザ合意と同じ方向だ。
プラザ合意時は1ドル約240円だった。
合意直後から予想外に急激なドル安が進み、ルーブル合意でブレーキを踏まれることとなった。
ルーブル合意時は約150円だったが、その後もドル安は止まらなかった。

ブレトンウッズ体制下でのドル円相場が360円だったことを考えると、日本は戦後の復興の引き換えに円高に苦しんできたと言える。
これが日本の金融政策が系統的に緩和的であり続けた一因だ。
そして、プラザ合意後の円高を食い止めるための拡張的金融政策は1980年代終わりの巨大バブルの大きな要因となった。

今日本は円安に苦しんでいる。
だから本当にマールアラーゴ合意が実現するなら(すでに日本にできることは少なくなっているが)円高ドル安を受け入れるかもしれない。
ただし、財政面も考えるなら、日銀はさらなる大きな利上げはやりにくいだろう。

仮に前回と同じように、予想外にマールアラーゴ合意が効いてドル安が行き過ぎたら日本はどうなるか。
(外貨準備は減価するだろう。)
外需にはマイナスだろうが、バブル期と同様、内需中心の大ブームが起こるのだろうか。
仮に円が購買力を取り戻した場合、日本の企業・消費者・投資家はどう行動するだろう。


 前のページ 

-海外経済, 投資, 政治
-,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 本サイトでは、オンライン書店などのアフィリエイト・リンクを含むページがあります。 その他利用規約をご覧ください。
S