ふくおかFGの佐々木融氏が、従前どおり、円安方向の見通しを述べている。
その中で《リスクオフの円高》への言及が目を引いた。
「どちらにしても米国の仕掛ける通商摩擦の犠牲になるのは円ということになるのかもしれない。実需的に考えればどちらに転んでも円売りが増えることになる」
佐々木氏がReutersへの寄稿で、通商摩擦がどちらに転んでも円安要因になると説明している。
「どちらに」の意味については原典を当たられるとよい。
短期・長期での効き方について意見はあろうが、確かに円安要因になろう。
ここでは《リスクオフの円高》が望みにくくなっているとの指摘を紹介したい。
佐々木氏はいくつか過去のリスクオフ時とは異なる状況を挙げている:
- 投機筋が円買いを膨らませている。円キャリーでない。
- 貿易収支は赤字。
- 実質金利はマイナス。
そもそも《リスクオフの円高》の最も原始的な説明とは何だったか。
円キャリー取引、つまり円で調達してドル等の資産で運用する《リスクオン》が、景気後退・市場悪化などのリスク増大にともない巻き戻すというものだった。
円キャリーが解消される過程で円売りドル買いが反転し、円高になるというシナリオだ。
今回、逆に円買いが積み上がっていることを考えれば、そもそも巻き戻すべき為替ポジションがネットで乏しいのかもしれない。
現在円買いポジションが積み上がっている理由は、貿易摩擦や景気後退懸念で今後円高が見込まれるとの思惑であろう。
しかし、ドル円に関し市場はすでにかなりこのシナリオを織り込んでしまっている可能性がある。
そうだとすれば、景気後退時に見られた円高についても「噂で買って事実で売る」とまではいかなくとも、ドル円の底はかなり浅くなるのかもしれない。
もちろん、円での調達をともなわない、日本人の自己資金による海外投資が巻き戻すなら話は別だ。
しかし、日本人の海外投資もずいぶん腰が据わってきた印象がある。
以前ほど景気悪化での円高を想定できるのか。
もしできないなら、円の現預金を抱えた日本人が円高を待たずに海外投資を増やそうとするかもしれない。