ふくおかFGの佐々木融氏が、切り取る必要のないほど単純明快に足元の円安を解説している。
投機筋に濡れ衣を着せる言い訳は通用しないという。
今の日本は実需の円売りには事欠かない状況となっているのだ。
佐々木氏がReutersへの寄稿で結論を述べている。
同氏は様々なファクトから、投機筋主犯説、金利差主犯説の可能性が低いと分析する。
その代わりに外国証券投資、貿易赤字、デジタル赤字など、いわゆる実需が主たる原因である可能性が高いと結論づけている。
短いが説得力のあるコラムなので、原典を読まれることをお奨めする。
これも以前、佐々木氏が紹介していたことだが、明治開闢にともない1871年に通貨 円が導入された時には1ドル=1円が意識されていたという。
(10ドル金貨と10円金貨の重さが約15グラムだった。)
それが戦後の1949年には1ドル=360円になった。
ところが、1971年のニクソンショックから日本の大反転が始まる。
変動相場制移行後のドル円相場
1995年には85円を割る円高、震災後の2011年には80円を割る円高があった。
それが近年、リフレ政策もあって再び円安方向に振れている。
まさに円安派・リフレ派の皆さんが求めるとおりになっているが、国民は恩恵を受けるどころか大いに苦しんでいるように見える。
もっとも、この傾向は30年ほど前から静かに進んでいた。
(佐々木氏はこの頃、日銀で介入事務を行っていたらしいから、まさに因果応報だ。)
名目為替レートではわからなかっただけで、実質実効為替レートでみれば1995年からのトレンドになっていた。
名目ドル円レート(青、左)と円の実質実効レート(緑、右)
いじわるな言い方をすれば、通貨安による外需の取り込みとは安売り戦略だ。
人的資源など日本由来の資源も円安で一部安売りされるのだから、日本国民が貧しくなるのは必然との見方もありうる。
それを覆すためには、例えば、円安により輸出数量が拡大するなどが必要だが、そうはなっていない。
(次ページ: ドル円レートの歴史)