国内経済 投資

【短信】佐々木融氏の緻密な分析が終末論に聞こえてくる辛さ

円の価値を長期的にレビューしよう。
もちろん、戦争があったとか、通貨の連続性だとか、言い訳はあるのだろう。
しかし、その言い訳が些細なことと感じられるほど、円のドルに対する相対価値はダイナミックに変化してきた。


円は導入から80年足らずでドルに対する価値が1/360になった。
その後20年余りで再び変動相場制に戻り、そこから40年で1/80まで戻した。
そこから15年足らずで再び半値の1/160近くまで落ち込んでいる。

ドル円に周期性はあるのだろうか。
もしも超長期で見て周期性ではなく趨勢があるのだとすれば、150年あまりで1/160になっている。
年あたりドルに3%超も負けている計算になる。
仮にこれが趨勢であるとすれば、10年で40%近い名目レートでの円安トレンドということになる。
読者の中にはまだ数十年生きる予定の人も多いだろう。
かなり深刻なペースなのだ。

(せめてもの救いは、日本の物価が米国より低いこと。
実は、10年で40%という名目レートでの数字は、悲惨さを過大に見えている面がある。
皮肉なことに、日本は忌み嫌ってきたディスインフレによって救われてきた。
ただし、インフレと為替の間に長期的連動性があると考えるなら、この救済はなくなってしまう。
つまり、日本でも輸入インフレが直接的にホームメイド化するようになる。)

佐々木氏は外国証券投資を「実需」に分類している。
アウトライトの円投ドル転による投資が流行っているのだから、この分類は妥当だ。
そして、これは自己実現的サイクルになりうる。
まだまだ円相場は(過去と同様)山あり谷ありなのだろうが、決して安心できる状況ではないのだろう。

投資に限らずビジネスパーソンの基本スタンス、危機管理の基本を思い出そう。
最悪を想定し、楽観的に行動する。
これに尽きるのではないか。


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