モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏が、従前からの米市場シナリオを継続しつつ、それをよりいっそう物語の形で語っている。
「今年面白いことになりうるのが(景気でなく)政府の後退だ。」
ウィルソン氏がCNBCで、自身の景気予想を繰り返した。
ウィルソン氏の従前の予想は、年前半の米市場が停滞するというものだった。
新政権の年前半の政策には、関税を筆頭に、景気や市場に短期的にマイナスとなるものが多いためだ。
年後半になると、政策の効果が現れたり、減税が議論されたりして、市場が立ち上げるとのシナリオだった。
ウィルソン氏の言う「政府後退」とは、政府のやりすぎ(クラウディング・アウト)が解消すること。
過剰な政府機関など、政府が資本だけでなく労働力をも吸い上げ、民間の事業運営がしにくくなっているとの考えだ。
「政府後退」が起これば、労働市場は一時悪化するだろうが、それ以外の部分では歯車が回りやすくなるという。
雇用がいくぶん弱まれば、FRBも利下げしやすくなるのが一例だ。
私たちの強気シナリオは政府が縮小するというもの。
クラウディング・アウトが停止し、FRBがある時点で利下げできるようになり、市場の広がりが実現する。
懸念材料となってきた米国株市場の上昇銘柄の狭ささえ、クラウディング・アウト解消によって解決しうるというのである。
ウィルソン氏は労働力のクラウディング・アウトが大きいと見ていて、それが特に中小型銘柄の足を引っ張っているとの考えなのだろう。
同氏は、政府効率化省DOGEが過小評価されていると話している。
「現実には、DOGEはおそらく最もブルなことが起こりうるところだろう。」
過去50年間の米国で拡張的な政策から大きく引き締めに転じた、最も印象的だったトップ2を挙げるとすれば、ボルカー・ショックとクリントン政権での財政黒字化だろう。
米財政収支(青、左)と実効FF金利(緑、右)
ウィルソン氏は、クリントン政権下での財政再建のような変化に期待しているようだ。
1990年代を思い出すと大きな強気相場があった。
それに火をつけたのは、1994年の予算協議だったと考えている。
長年、双子の赤字に苦しんだ米国は、クリントン政権下でいったん財政黒字化を果たすことになった。
財政再建は足元の景気にはマイナスだが、後にプラスの効果が表れる。
皮肉なことに、そのプラス効果には2000年のITバブルを後押しする面もあったのだろう。
いずれにせよ財政再建は短期でマイナス、長期でプラス、と考えるべきなのだ。