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【短信】最大の債務国、最強の強国:ローレンス・サマーズ

ローレンス・サマーズ元財務長官が、将来、米財政問題やドル相場に訪れる大きな岐路について予想している。


「米国は、冷戦終結後経験したことのない大きさの安全保障上の課題に直面している。・・・
これに対処する最善の道は、経済の強さによる方法だ。」

サマーズ氏が大統領・連邦議会選挙のさなかBloombergで新大統領が直面する難題について語った。
足元の米経済は強いと言われているが、それは民間セクターの話だ。
同氏は、米国が自問すべき問題を語る。

世界最大の債務者はどれだけ長く世界最強の強国で居続けられるだろう?
米国の国家債務・財政赤字は現在持続可能な水準にはない。

サマーズ氏は、共和・民主両党が財政再建に前向きでない現状を危ぶんでいる。
また、過去を振り返ると、大統領が金融政策の希望を口にすると、結果的に長期金利が上昇してきたと警告した。

「ドルを毀損しドル安を願うという話は心配だ。・・・
私には、ドルには世界の準備通貨である以外、存立可能な選択肢は考えられない。
競争優位を維持するべきだ。
でも、ああ、米国の目標がドルの価値を減価させることなら、それは維持できない。」

サマーズ氏がクリントン政権で財務次官に就任した頃、まだ日米貿易摩擦はくすぶり続けていた。
米政権は円高ドル安を誘導し、1995年には1ドル81円台の円高となった。
この通貨安誘導を転換し、為替の協調介入で相場を逆転させた米国側の責任者がサマーズ氏だ。

世界に基軸通貨を供給し続けてきた米国は、当然の帰結として莫大な対外債務を負っている。
もしも米国がドルの減価を望み、結果、外国が保有する対米債権の価値が急減するようなら、この構造は成り立たなくなる。
債務者が債務の価値を急減させられるなら、誰も債権者にはなりたがらなくなってしまう。
(ただし、緩やかななドル安なら持続可能であり、実際、長い目で見てそうなってきたため、米国は莫大な恩恵を受けている。)
これこそ近年、中長期的なドル相場に対して心配する人が増えている理由だ。
しかし、これまでのところ、サマーズ氏の心配するような大きな変化はまだ起きていない。
ミンスキー・モーメントのような岐路は、賢い人が心配を始めてからもしばらくは来ないことが多い。

遅かれ早かれ債券市場は学んでいき、金利が急騰した時、多くの人の財政問題に対する考え、危機感が変わるのだろう。
・・・金利急騰が起これば、その時、より建設的な行動が進められるのだろう。


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