ローレンス・サマーズ元財務長官は、中国が現在の米国についてどう見ているかについて、興味深い話を紹介している。
この関税が(交渉の)ツールなのか、財源なのか、両方を得ることはできない。
他国が関税を撤廃すれば米国も関税を取り下げるなら、財源になるから財政赤字は心配ないとしつつ、ツールになると言う話にはならない。
政権は単純に矛盾している。
サマーズ氏がBloombergで、いつものとおり理路整然と政権の詭弁を批判している。
トランプ政権は関税によって財政赤字縮小と他国による不公正な貿易慣行の撤廃の両方を実現できると自慢してきたが、これには論理的矛盾がある。
さらに、サマーズ氏は、経済・市場に大きな不確実性を与える政権のアプローチも批判する。
「政策決定者の伝統的アプローチとは、環境を可能な限り予見可能にすることで、企業の自信を高めることだ。
しかし、最大限の自由度を維持しようという、この新たなアプローチは、おそらくテレビ番組の視聴率を向上させるのにはよいのだろう。
視聴者は次に何が起こるか全くわからないからだ。
でも、これが投資の基礎となる自信を高めるとは信じがたい。」
現在の政策をサッチャーやレーガンの政策に例える人がいることについて、サマーズ氏は比較対象として不適切と切って捨てる。
サッチャーやレーガンの政策の多くは混乱を招いてでも実行すべき確かな理由があったという。
サマーズ氏はトランプ関税を1930年スムートホーリー関税と並べるべきものという。
誇張されている面があるとしつつも「スムートホーリー関税は不況を悪化させたといってよい」と述べ、トランプ関税の悪影響を心配した。
同氏はトランプ関税によって来年までに景気後退入りする確率が五分五分に上昇したと見ている。
サマーズ氏は、中国が米国発の大混乱についてチャンスと考えていると話す。
私が見聞きしたところでは、中国は、米国がある種の文化大革命を実行していると見ている。
さらに彼らは、いかに文化大革命が社会を害しうるか誰よりも心得ており、これが大チャンスだと見ている。
米国が今行っている同盟国の疎外、国内対立、内部闘争などが、中国にとって大きなチャンスを与えているという。
関税などトランプ政権の政策が米国の資本コストにどう影響するか尋ねられると、サマーズ氏は資本コストが上昇する可能性を語っている。
同氏は、米国例外主義の一側面として高いPERを挙げ、その一因を安定した企業利益と指摘する。
その安定の一因が法の支配であり、それが今失われつつあるという。
ここでサマーズ氏は法の支配について、やや突拍子もないが興味深い持論を述べている。
米国に同族会社が少ないか理由についての持論だ。
「親類以外の人々を信頼できなければ、最良の人材でなく従妹を選んでしまう。
これは、社会が支払う経済的コストだ。
米国は法の支配が素晴らしかったので前世紀このコストを払わずに済んできたが、この方向に戻りつつあるのかもしれない。」
これは同族会社についての意見であると同時に、国際関係についての比喩でもあるのだろう。