ケネス・ロゴフ教授は、バブル後の日本に言及する。
「日本のように、中国は金融抑圧により長い間金利を低く保つことができるだろう。
しかし、起こるであろうトレードオフは経済成長の鈍化だ。
過去30年の日本の経験は(中国の)最終的な行き先を垣間見せてくれるだろう。」
興味深いのは、ロゴフ教授は日本の慢性的な低成長の一因が金融抑圧、もう少し穏やかに言い換えると低金利政策にあると考えているように読める点だ。
教授は、金融緩和では問題を解決できないと考えているのだろう。
中国はかつての改革開放路線により経済を発展させ「中国経済の奇跡」と称賛された。
「奇跡」の原動力とは何だったのか。
ロゴフ教授は、プリンストン大学の研究を紹介している。
「地域のデータを分析したところ、標準的なケインジアン・モデルで期待されるのとは逆に、省のGPD成長は2002年から2008年まで企業利益と小売売上高の両方と強い相関があった。
注目すべきは、この相関が2011年から2019年までに完全に消滅したことだ。
同じ論文での関連した分析では、資本と労働の投入に影響する都市レベルの生産性上昇が、刺激策前までは強かったのに、後年は大きく低下したことが示されている。」
つまり、2008年までの「中国経済の奇跡」は企業や消費者の中で起こっていたのに、財政刺激策が拡大された後は主役が交代していたわけだ。
新たな主役は政府の財政政策に依存し、決して持続可能とは言えないものだったのだろう。
ロゴフ教授は、財政刺激策を中国経済復活のカギとする考えには否定的だ。
政策による一時的な需要の押し上げではなく「経済成長の質」が重要と考えているようだ。
「経済成長の質は一貫して低下し、遅かれ早かれ、もはや会計トリックや非生産的なインフラ・プロジェクトで経済の根柢の弱さを隠すことができなくなるだろう。
唯一、持続的に経済成長を再生する道とは、過去10年強制的に権力を堅持してきた中央政府が権力の一部を地方政府、そして重要なのが民間セクターにそれを委譲することだ。」
なるほどこれは重要な視点だろう。
この通りだとすれば、中国経済の復活はまだ全く見えていないことになる。
中国の問題が深刻と思えるのは、ロゴフ教授の主張を実行したとしても、それがひどく抽象的な変化に留まる点だ。
経済活動における具体的変化を提唱したものではなく、いわば必要条件を提示したにすぎない。
もっとも、この問題が深刻なのは、世界中でも日本人が最もよく知っていることなのだが。