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【短信】貿易戦争・国際対立をやりすごす方法:レイ・ダリオ

ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏のシンガポールで開催されたコンファレンスでの発言(既報記事あり)について全貌が公表されたので、注目点を紹介しよう。


歴史を振り返ると・・・めざましい新技術が生まれ、それが世界の姿を変えてきた。
人々は興奮し、価格を気にしなくなる。

ダリオ氏がCNBCインタビューで「現在はバブルか」尋ねられ答えた。
同氏は現状がITバブルに向かう1998-99年に似ているとコメントした。

素晴しい企業を高値で買うより、悪い企業を安値で買う方がよい。
これはサイクルなんだ。

投資対象の甲乙が投資パフォーマンスを決めるわけではない。
その価値に対して安く買うか、高く買うかの方が大きな決定要因だとの信念だろう。
(ディストレストの草分けハワード・マークス氏がよく口にする考え方だ。)

ダリオ氏は従前から米債務問題について警告してきた。
その対処として最近「3%、3面の解決策」と呼ぶ政策対応を提起。
その1面が、財税赤字を対GDPで3%に抑えるというものだ。

キャスターは、景気後退なしにその財政再建が可能か尋ねている。
ダリオ氏は、米国が財政立て直しを実現した1992-98年を例にとり、財政支出・税収(税率ではない)・金利の要因を挙げ、政府の利払い費を減らすための金利押し下げが効果的と主張している。
財政再建により米国債需給を改善すれば金利が低下し、それがさらなる財政再建と信頼感改善につながるとし、景気後退なしに実行可能との考えを示した。
(金利をゼロに保っても財政が悪化した国もあるが・・・)

通商問題・国際対立の先行きについて尋ねられると、ダリオ氏は1930年代の欧州、特に敗戦の痛みを引きずるドイツを引き合いに出している。

「ドイツは債務の一部をホゴにし、関税を設け税収を増やし、内向き・国家主義的・保護主義的・軍国主義的になっていった。
物事はこう進むものなんだ。・・・
関税は国家間の戦争を生む。・・・
軍事戦争かもしれないが、必ずしもそうとは限らない。」

そうした物騒な状況にある世界経済について心配するかと尋ねられると、ダリオ氏はやり過ごし方のヒントを話した。

そういう時期は中立国が極めてよい。
人や資本が集まり、うまく乗り切って繁栄を手にする。
そういう国は、世界全体に対して影響は与えないが、恩恵を受けることができる。
シンガポールのように、難しいことだが中立を保ち乗り切れば、多くのチャンスが得られる。

ダリオ氏は2020年にシンガポールにファミリーオフィスを、ブリッジウォーターは2022年にシンガポール・オフィスをそれぞれ開設している。


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