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【短信】金融市場「メルトアップ」中の利下げ:ドラッケンミラー

スタンリー・ドラッケンミラー氏が、いつもの通り実に通好みの話をボソボソと話している。


私は理論で動く人間じゃない。
市場の生き物だ。
長年の経験で知ったのは、市場は学者たちより優れた予想者だということ。

ドラッケンミラー氏がBloombergでFRBをディスった。
1990年代初めジョージ・ソロス氏の下でBOEを敵に回し、かつては基軸通貨だったポンドを売り崩した人だからこその説得力だ。
米経済・市場には引き締めの兆候は見受けられないとして、9月の50 bp利下げを批判した。

ドラッケンミラー氏は現実的な意見を率直に語る人物。
このインタビューでも政治や大統領選について率直な意見を語っている。
米国の知性的・良心的中道右派の考えに興味がある人は、ご自分でこの21分のビデオをご覧になるのをお奨めしたい。
以下、断片的に興味深い発言を紹介する。

「1970年代には、インフレが2021年と似た水準から低下した局面があった。・・・
3%まで下がったところで、1975年の景気後退でFRBは金融緩和を実施した。
FRBが緩和を始め、インフレはピークの12%に向けて再上昇した。」

ドラッケンミラー氏は、インフレ再発のリスクを心配している。

それを予想しているわけではないが、金融市場がメルトアップし、財政政策も続く中で、これは間違いなくリスクであり、リスクを勘案しないのは誤りだ。
50 bpと急いだのが理解できない。
市場は97%の確率で次回FOMCでの利下げを予想しており、すべてFRBのフォワードガイダンスで誘導されたものなんだ。

ドラッケンミラー氏が訝しむのは最初の利下げを異例の50 bpとしたことだけではない。
さらにフォワードガイダンスを用いて市場を金利低下に誘導している点を問題にしている。
インフレ再発リスクが存在する中で、不必要に緩和的な金融環境を生み出しているという。

来月に迫る選挙については予断を許さないとしつつ、市場が予断を始めていると話した。

「過去12日、市場とその内部はトランプ勝利を強く確信したようだ。
銀行株、暗号資産、トランプのSNS会社 DJTの株に表れている。」

ドラッケンミラー氏は、大統領選・議会選の勝敗いかんで選挙後3-6か月に相場がどう動くかを予想している。
トランプ氏と共和党の勝利(レッド・スイープ)が市場にとっては上げ材料になると語る。
まだ結果について予断を許さないのなら、仮に市場の当てが外れれば悪い方に転ぶということだろう。

金利の見通しを尋ねられると、ドラッケンミラー氏は、9月利下げ後に債券をショートし今もポジションを継続していることを明かしている。

「パウエル議長が間違っていて、インフレが加速すれば、債券利回りはとても大きく、数百bp上昇するかもしれない。
逆に正しければ、ショートでせいぜい25-30 bpやられるかもしれない。」

利下げ後、ドラッケンミラー氏には、リスクが片方に偏っているように見えているのだろう。
現状の市場の織り込みよりさらに金利が下振れするリスクは比較的小さく、上振れするリスクは大きいと見て、ショートを続けているのだ。

私がいつも堅持している黄金律とは、10年債利回りが名目GDPの近傍にあるべきというもので、名目GDPは5.5%。
リスク/リターンで見て、債券をショートしている。

ドラッケンミラー氏はこのインタビューの中で何度か、インフレ再上昇を予想するわけではないと口にしている。
予想はしないが、そちらに動く余地が大きく報酬も大きいから、ショートしているというのである。


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