レイ・ダリオ氏が秋に予定する新著『How Countries Go Broke』(国家はどのように破綻するか)についてインタビューを受けている。
日本人はとてもよい例だ。
日本人は、円債という最悪の投資を行っていた場合(名目)価格は下がらないものの金利は例えば米国などと比べて3%低かった。
円は(年あたり)3.5%減価した。
日本人は長年にわたって年6.5%も損をしていたんだ。
ダリオ氏がBloombergで、日本を例に長期債務サイクルで起こることを説明した。
同氏はこの手の話をする時しばしば日本を典型例として挙げている。
もちろん損をしたのは債券だけではあるまい。
金利が低く抑えられる、いわゆる金融抑圧状態では、株式が債券より有利になる。
リスクプレミアムまで圧縮する信用緩和ではなおさらだ。
ただし、これらは相対的な有利・不利の話だ。
リスクフリー金利を経済の実勢より引き下げれば、少なくとも政策実施後に投資する投資家にとってはその分超長期にわたってリターンが低減しかねないことも考慮すべきだろう。
日本で言えば、異次元緩和前に株を買った人は勝ち、実施後に買った長期投資家はおそらく不利になると考えるのが理屈にあっている。
(だからといって、長期投資に関して円債に戻ることはやはりお奨めできない。
株式であれば、金融抑圧分を(縮小されているがなにがしかの)リスクプレミアムで埋められるかもしれない。)
ダリオ氏は通貨の減価に関し近年世界中で起こってきた現象を指摘する。
日本ほどでなくとも、財政が悪化し金融緩和に慣れ切った国はとても多い。
「今目の当たりにしているのは、金ほかの資産に対するすべての通貨の減価だ。
これを注視しなければいけない。」
ダリオ氏は通貨の価値を金との相対価格で測ることが多い。
つまり、昨今のドル建て金価格の上昇では、上昇したと言われる米ドルについてもドル安が進んでいたことになる。
同氏は、現状が長期債務サイクル終期の特徴を強めていると語る。
「金融緩和が行われている一方で、長期側で金利が上昇し、ドルが減価している。」
ダリオ氏は、これが債券需給の悪化を示していると見ている。
サイクルが終期になると、債務圧縮のための荒療治を行わなければいけなくなるのは、草稿で見たとおりだ。
これは債券から離れている、あるいは債券を売りその投資から撤退したことを反映している。
その力学が見えたら、それが赤信号だ。
長期金利が上昇した米国で言えば、ドル建て金価格上昇が止まらなくなったり、ドル相場が下落へ転じるなどだろうか。
金融政策正常化に着手している日本で言えば、次の金融緩和期に長期金利上昇・円安が止まらない場合などだろうか。