アリアンツ主席経済顧問モハメド・エラリアン氏は、米国例外主義は消失していないとする一方で、米金融政策について心配事を指摘している。
「よいニュースは、いくつかとても嫌なテクニカル要因が過ぎ去ったことだ。」
エラリアン氏はCNBCで、テクニカル面での米国株市場低迷の原因が解消したと語った。
同氏の指摘したテクニカル要因とは2つ。
レバレッジを掛けた米国買いの巻き戻しと欧州市場への機関投資家の注目だ。
前者は終了し、後者も数週間前ほどではなくなったという。
欧州市場の活況にともない米国例外主義が終焉しつつあるのではとの見方について、エラリアン氏は明確に反対意見だ。
理由は2つ。
1つ目は欧州市場が本物なのか、まだわからない点。
「みんなドイツの発表で参入したが、実行状況は全く異なり混乱している。
発表を実行に移すのはとても難しい。」
もう1つは米国の強さが本当に失われているのかだ。
現在は大量の不確実性があるものの、もしも雲が晴れれば、みんな(米経済の)本来の強さに再び集中するだろう。
結局のところ、一番重要なのは「雲が晴れ」るかにあることになる。
FRBが関税のインフレへの悪影響などををあまり気にかけていないように見える点について、エラリアン氏は2つの解釈を示している:
- FRBは悪化するソフトデータを心配し、様子を見ている。
- FRBはソフトデータを重視せず、インフレ高どまりを「一過性」と見ている。
全く異なる解釈だが、エラリアン氏は前者に注目すべきと話している。
同氏は、市場が予想する年内利下げ回数2回を過剰と見る。
ソフトデータの中のインフレ予想の悪化を考えれば、FRBはそうそう利下げできないとの考えだろう。
エラリアン氏自身は、インフレの悪化懸念を重視し、景気後退のない限り年内利下げはゼロまたは1回だと予想している。
ソフトデータに表れているのにハードデータに表れていない場合、それはタイムラグだ。
通常3-6か月のラグがある。
それは物価のデータも同じだ。
復習しておこう。
エラリアン氏の予想は、最近のソフトデータの悪化が半年以内にハードデータにも表れるというものだ。
ただし、同氏のメインシナリオは景気後退まではいかないというもの。
それでも、年内利下げ回数が市場織り込みの2回から下回れば、市場にはよくない方向に作用するのだろう。
一方、エラリアン氏は年内の景気後退入り確率を25-30%と見ている。
こちらが実現する場合は、利下げ回数は負のサプライズとはならないのだろうが、そもそも景気が下ブレするのだから、あまりよい状況とは言えないことになる。
少し前まで、よいことがあっても悪いことがあっても米市場は順風満帆との楽観論が溢れていたことを思うと、すっかり様変わりしている。
それもこれも、高めのインフレと景気鈍化が同時に起き、金融政策の自由を奪っているところにあるのだろう。