23日執筆時点で私の見ているスクリーン上ドル円が1ドル=160円に迫っている。(浜町SCI 23日)
(瞬間的・局地的には何度か超える局面があったようだ。)
ここでは、景気後退時にドル円がどこまで円高に戻しうるか、感覚を持っておこう。
今回は《最悪(あるいは最良)のシナリオ》をリーマン危機なみの不況が到来し円が買い戻されるケースとする。
こうなれば、米国はゼロ金利近くまで利下げし、量的緩和へ回帰するだろう。
少なくとも日米金融政策の差異による円安は巻き戻すと予想される。
また、これほど大きなリスク到来なら、さすがに海外リスクを取っていた国内投資家・企業が一部投資を引き上げるはずだ。
一方で、リーマン危機から人類は学んだ。
仮にそれが弥縫策であっても、今回は急変の幅が小さくなるかもしれない。
また、リーマン危機時には日本が円高を我慢して欧米を支援する役割を負った面があった。
少なくとも次回、日本は前回と比べ金融政策に積極的だろう。
こんなことを考えれば、リーマン危機級の円高への巻き戻しは、少し控えめな最悪/最良シナリオであると思われる。
終末論者などは、もっと悲惨なシナリオ、つまり文字通りの終末もありうると言うかもしれないが、それは無為な議論だ。
本当の終末が訪れるなら、備えようもない。
そんなケースをクヨクヨ考えるのに現実的な意味はない。
サブプライム/リーマン危機前の円安はどの程度だったか。
2007年6月に124円を超えたことがあった。
この月は、ベアスターンズが傘下ヘッジファンドに資本注入した月。
なるほど危機前の絶頂としてふさわしいタイミングだろう。
危機後の円高は2011年10-11月に80円を割り込んでいる。
大震災の半年余り後であり、いくぶんその不運も重なっている。
この高値/安値の落差は約60%(差は約40%)だ。
160円から60%に下がれば96円。
この水準をどう見るか。
アベノミクスがスタートして1年弱後の2013年11月まで、96円より低い時期がある。
アベノミクスに危機対応の意味があったなら、96円はまだ円高すぎる水準だろう。
ただし、これは循環的な安値でもあったはずだから、一部は自然に是正される運命にもあったのだろう。
当局はその後の2015年、ドル円が125円前後でブレーキを踏むようなメッセージを発している。
160円から125円の落差は78%(差は22%)。
あまり私見を含めず浅く結論を出すと
リーマン危機級の危機が再来するなら96円。
当局が一時上限と見た水準は125円。
今後、私たちが危険を感じるべきは円高だろうか、円安だろうか。