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東京証券取引所アローズ 【Wonkish】「分散」という欺瞞。巧妙なレトリックにだまされてはいけない

リターンとリスクの使い分け

ファイナンス理論で投資リターンと言えば、投資したことによる儲けの意味だ。
この概念に日常用語との相違はない。
ところが、リスクについては大きな相違がある。
ファイナンス理論においては狭義のリスクとは上下に分布するブレのことを指す。
日常用語ではおそらく下方リスクを指す。


日常用語におけるリスクとは、ファイナンス理論における狭義リスクではない。
むしろ、日常用語におけるリスクとはファイナンス理論におけるリターンの概念により近いもの、追加的な負のリターンなのである。

恐怖指数に代表されるボラティリティはファイナンス理論における狭義リスクの1つだ。
ボラティリティとはリターン率の標準偏差で計算される。
標準偏差は平均値からの変動の大きさを示すものと言え、大きさであるから負の値をとらない。
リターン率は正の値の場合もあるし負の値の場合もあるが、ボラティリティは常に正の値だ。
つまり、ボラティリティとはリターンが上ブレするか下ブレするかに直接関係しないのだ。

なぜ、人々は市場のボラティリティのことを恐怖指数と呼んだりするのか。
それは、市場ボラティリティが上昇する時によくないことが起こることが多いからだ。
1つにはブレの小さな運用、投資信託で言えばシャープ・レシオの小さな運用を好む人がいる点だ。
こういう投資家にとっては大きなボラティリティは脅威になる。
もう1つの理由は、逆の経路からやってくる。
市場の見通しが悪化すると、損失を恐れてプット・オプションを買う人が増えることがある。
これによりオプションの価格が上昇すると、オプション価格に内包されるインプライド・ボラティリティが上昇するのである。

ボラティリティは決して嫌われ者ではない。
トレーダーの中には値動きのよい銘柄を好む人が多く、これはボラティリティを選好しているのだ。
数年前までFX市場が不気味に安定していた頃、多くのFX投資家が暗号資産市場に参入したとの報道があった。
これなどもボラティリティを選好する市場参加者の存在を暗示している。

(次ページ: 2つのリスクを正しく理解しろ)


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