アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、世界のほとんどの国の株式リスクプレミアムを計算し続けている理由を話している。
ダモダラン教授は定期的に、価値評価に必要となる様々なパラメーターを計算し大学のウェブサイトで公表している。
特に米国や諸外国の株式リスクプレミアムについては、グローバル投資家にとって関心の的だ。
なぜ先進国からアフリカに至るまで計算を続けるのかBogleheadsから尋ねられ、教授は話し出した。
「ワケがあってやってるんだよ。」
もはや米企業など存在しない。
それらは多国籍企業であり、たまたま歴史の偶然で米国を本拠にしているだけなんだ。
ダモダラン教授は、将来キャッシュフローをリスクに応じた割引率で割り引く企業価値評価の本質に立ち返っている。
「なぜこれが重要かといえば、企業のリスクとはどこで設立されたかでなく、どこで事業を行っているかによるからだ。
・・・
私のウェブサイトのデータのほとんどは、私が完全に自己中心的である必要があるから計算しているんだ。」
30年前から始めたという国別計算は、多国籍企業の外国へのエクスポージャーを反映するためのものだという。
これは知恵のある実務家の多くが疑問に抱いてきたテーマだろう。
米企業でなくとも、日本企業もまた外国エクスポージャーの多い企業が多い。
ある銘柄は米国、ある銘柄は中国、あるいは総合商社のように無数の国々のエクスポージャーを抱える企業も多い。
その価値評価に日本のリスクフリー金利、日本の株式リスクプレミアムを用いればよいのか?
理論上は、キャッシュフローを国ごとに分けて別個の割引率を用いるということになるが、個別銘柄に対しそれを実践している人は皆無に近いのではないか。
1つの自己欺瞞は、外国エクスポージャーが銘柄のβリスクに反映されていると解釈し、日本のリスクフリー金利と株式リスクプレミアムを用いるという考えだ。
しかし、それが理論的に正しいという証明はない。
仮にある1つの外国へのエクスポージャーが極めて大きい企業があったとして、このやり方が正しいやり方ではないのは明らかだ。
この問題は、外国資産の評価に用いる将来の為替レート予想と同様、実務上かなり悩ましい問題だ。
「次の10年の成長がインドから来るとしたら、インドの株式リスクプレミアムの動向を追わなくてよいの?」
ダモダラン教授は問うている。
この問題は特に新興国市場投資、新興国市場へのエクスポージャーが大きな場合に顕在化してくるという。
ブラジル、インド、インドネシア、一部のアフリカに投資する場合、株式リスクプレミアムは高くなければいけない。・・・
とても簡単なやり方として、格付AAAに近くほぼ安全な成熟市場については米国のプレミアムを用い、リスクが高いと思う国に追加のプレミアムを乗せることから始める方法がある。
・・・これら市場にはショックが起こりうるからだ。