高配当株人気はむしろ短期トレード
では今なぜ高配当株がもてはやされるのか。
長期投資家にまで推奨されているのが現実だ。
実は、高配当株がアルファを生み出すような状況とは、むしろ短期的、よくて中期的なトレンドに着目した投機、またはトレードなのである。
たまたま東証から提言が出るなどして、セールスしやすい環境になっただけなのだと思う。
筆者はそれを非難するつもりはないが、聴衆がそれを正しく理解できているか心配だ。
また、詳説しないが、増配や自社株買いが有するシグナリングの効果も存在する。
しかし、シグナリング自体の株価への効果は短期的材料である。
高配当株の本当の魅力
高配当株に魅力がないわけではない。
利益をいったん株主に還元しようという考えは誠実だと思う。
見識ある投資家は、こうした部分にも注意を払い、企業経営者を値踏みしていると思う。
また、年金基金・財団や引退世代の中には定期的なキャッシュフローへの需要も大きい。
しかし、それとリターンの議論を過度に関連付けるべきではなかろう。
別個のポイントとして検討すべきものだ。
配当より自社株買いが有利
もう1つ、自社株買いとの優劣についてもざっくりと説明しよう。
同じ企業が株主還元する場合、配当がいいか、自社株買いがいいか。
個人の分離課税の場合でいうと、配当に約2割の税金がかかる。
自社株買いなら株主のキャピタル・ゲインに対して約2割の税金がかかる。
通常、取得単価はゼロでないから、還元される金額が同じなら、当然、税金は前者が多くなる。
手前で多くの税金を払わなければいけないから、前者が不利になる。
この計算は法人になれば変わってくる。
しかし、変わらないのは、還元を受けたくない投資家は、自社株買いで売る必要がないということ。
投資家の意向によって手前の納税は回避できる。
ウォーレン・バフェット氏が自社株買いを投資先に推奨する1つの理由はここになる。
(もう1つは自社株買いによってバークシャー・ハザウェイによる持分が上がる点だ。)
最後に注意していただきたいのは、これは高配当株を含むバリュー株とグロース株の比較ではない。
バリューVSグロースとは、根源的価値と株価の乖離度合い、根源的価値の計測可能性に主眼をおいた論争である。