モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏が、今年から来年初めにかけての米国株ローテーションについて語っている。
ウィルソン氏は、現時点が新たなサイクルの開始(つまり新たな景気と市場の拡大の開始)ではなく、サイクル終期が延長したものだと考えている。
Bloombergでその理由を聞かれ、サイクル終期の特徴をいくつか説明している。
「(サイクル終期は)FRBが(利下げに)動き、株価倍率が拡大し、サイクルを通して最もブルな部分になる。
過去12か月を振り返ると、まさにそれが起こっている。
2025-26年の利益予想は上昇せず、後倒しされた。
倍率は17倍から22倍になった。」
ウィルソン氏は、いまだ前サイクルが続いており、新たなサイクルが始まったわけではないと読んでいる。
今年の市場の挙動がまさにサイクル終期に当てはまるという。
景気・市場サイクルの終期、先行きの景況感や企業利益予想は停滞する。
一方、FRBが利下げを始めることで株価倍率は大きく拡大する。
倍率主導で《メルトアップ》とか《最後のひと上げ》とか呼ばれる急上昇が起こる。
ウィルソン氏は米市場をサイクルという経験則の中で理解し、次を予想しようとしてきた。
サイクルの局面ごとにセクター/ファクターを乗り換えるやり方だ。
サイクル終期で起こる市場の重要な挙動をいくつか指摘している。
「通常(上昇が)狭い銘柄に集中し、それが起こっている。
クォリティ株が、行ったり来たりしつつも、うまく行く。」
ウィルソン氏は自社ポッドキャストで、今年のセクター/ファクター・ローテーションを振り返っている。
当初予想されたとおり、経済成長・インフレ・金融政策の見通し(ソフトランディング、ハードランディング、ノーランディング)が変化するについて行ったり来たりしたという。
- 1Q: シクリカル(エネルギー、工業、金融)
- 2Q初め: マグニフィセント7
- 夏: ディフェンシブ
- 3Q終わり: クォリティの高いシクリカル
- 最近: クォリティが高くないシクリカル、マグニフィセント7
ウィルソン氏は、通常より不確実性の高いマクロ環境が人々の見通しを「行ったり来たり」させ、それが市場に反映されたと解説し、2025年もこうした状況が続くと考えている。
同氏は来年1Qにかけての選択を次のように解説する。
「ポートフォリオのリバランスが進む1月には小型株や前年の負け組がアウトパフォームする傾向にあるものの、現在は大型の高クォリティのシクリカルやグロース株をバーベルで持つのが理に適っている。
明確な選挙結果が出たことで、今年は季節的な低クォリティの小型株上昇が前倒しになったように見えるため、まだ高クォリティ銘柄に留まっている。」
トランプ勝利により中小企業での景況感が強まり、小型株上昇が前倒しになっている可能性があるから、一服すれば反動があると予想しているのだ。
「大型の高クォリティのシクリカルやグロース株」上昇に対する「最大のリスク」として、関税や移民政策が心配されるほど強化されないこと、規制緩和が進むこと、が挙げられている。
一見リスクではないように思えるが、これらが相対的に小型株有利に働くとの含意だろう。
さらに、規制緩和については、短期と長期で異なる効果が予想されている。
過去数年政府が全体のGDP成長率を大きく牽引してきたことを考えると、短期的には(規制緩和の)成功は経済成長にマイナスになるかもしれない。
経済や株式市場が真に広がりを持てるかは、規制・絶対的規模の両方で政府が小さくなれるかによると考えている。
私はこれこそ、納税者・中小企業・市場のすべてにとって、最もエキサイティングな潜在的変化だと考えている。
しかし、これが完全に発現するには数年を要するだろう。
ウィルソン氏は、包摂的な経済・市場の拡大のためには小さな政府が必要と言っているのだ。
こうした意見がまだ生き残っているところこそ、米国が一縷の望みを抱かせる点かもしれない。
乱暴な言い方をすれば、(減税など)歳入を減らすべきという話だけでなく、歳出を減らすべきという話ができることが重要なのではないか。
言い換えれば、減税自体は一概に悪いことではないが、やはり財源を一緒に議論すべきということだろう。