ハワード・マークス氏は、投資における売り時の難しさに関連し、問題の根の深さを指摘する。
興味深いことに、すべての投資本において売りについて書かれた内容はおそらく1%にも満たない。
ほぼすべてが買い、いつ投資するか、何に投資するか、投資先をどう選ぶかだ。
投資においては、圧倒的に買い方に注目が集まり、売り方はあまり注目されていないとの指摘だ。
なるほどまったくその通りだ。
投資とは煎じ詰めれば《Buy low, sell high》だ。
買いと売りの両方によってパフォーマンスが決まる。
その割に、ほとんどの人は買いばかりを注目している。
2025年3月 ハワード・マークス氏インタビュー
マークス氏は、投資家の売りについて冷静に観察している。
そして、奇妙な投資行動を指摘する。
「ほとんどの人が2つの理由で売却をする:
上がったから売るか、下がったから売るだ。」
マークス氏は、それぞれの行動の背後にある考えを解説する。
- 上がったから売る場合: 利益を確定したい。
- 下がったから売る場合: 損を拡大したくない。
マークス氏は、これら考えを行動ファイナンス的視点から分析している。
「売りの多くは、賢明なことをしようというのではなく、自分が愚かだと感じたくないためになされている。
もしも、上がったから売り、下がったから売るというのを是とするなら、当然ながら両方が正しいとはならない。
真逆の事象に対して同じ行動をとっているからだ。」
マークス氏は、これら2つの考えについて「いずれも正しくない」と結論している。
同氏は、支出のために投資を売却することについては「投資のメリットとは無関係な合理的理由」と話している。
これは投資判断とは無関係の話だ。
一方「投資のメリット」の観点から見た場合、売りの理由は1つしかないという。
マークス氏は画一的な答を持ってはいないものの、画一的な手順を提示している。
- 投資に至った根拠が今も正しいか再検証する
- その根拠をアップデートする
- まだ上値余地があるか検討する
- もしもないなら「おそらく保有を継続すべきでない」
なるほど、途上与信の基本そのものであり、理に適った手順だろう。
これを読むにつけ、投資にあたっては明示的な投資の根拠の重要さ、さらにそれを記録しておくことの重要さが理解できる。
そもそも投資時に明示的な根拠を持たない人、根拠はあっても忘れてしまう人は、この手順を始めることさえできない。
(最も軽薄なのは、市場全体の上げ下げのみで個別銘柄の売りを判断することかもしれない。)
さらにマークス氏は、デジタル的すぎる思考にも釘を刺している。
「教条的な人、独善的な人のほとんどは、すべて買いか売りかで話す。
私はそうは思わない。
合理的に保有すべきものもある。」
マークス氏は保有、おそらく同氏にとっての中庸について例を挙げている。
10ドルで買った株が20ドルになったので再検証したところ25ドルと評価された場合、あと5ドルのために買い増しはしないかもしれないが、保有分を継続保有する価値はあるかもしれない、といった例だ。
要は手順にしたがって合理的に判断される「保有」もありうるのだ。