オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、2023年の振り返り、2024年の見通しを投資家にあてて書いている。
私の経験では投資環境には2種類ある:
投資家が将来起こることをわかっていると感じている時と、そうでない時だ。
私は将来のマクロ予想はできないとの懐疑を抱いており、人が何が起こるかわからないと言っている時こそ正しい場合が多いと考えている。
マークス氏が投資家にあてた4日付「Memo」で、経済市場の不確実性について語った。
一例として2016年末からのトランプ・ラリーを紹介している。
当時の《もしトラ》では(ポール・クルーグマン教授のように)株価大暴落を予想する人もいたが、結果は真逆だった。
マークス氏は説明する。
「私はしばしばこれを(a) 何が起こるかはわからない、(b) 起こることにどう市場が反応するかはわからない、ことの証拠として挙げている。
・・・不確実であることを認識しているのはとても健全なことだ。」
このMemoの中でマークス氏は、自身が常に投げかけられている質問を逆に質問している。
言うまでもなく、同氏の代名詞とでもいうべき経済・市場サイクルである。
「面白い質問をしよう: 今は経済サイクルのどこなのか?
これに対する答え方は2020年をどう見るかに大きく依存する。」
パンデミックの年をどう見るべきか。
もしも2020年を景気後退の年と見るなら、現在は「上昇サイクルの初期」だとマークス氏は言う。
しかし、2020年の景気後退は外生的要因によるもので通常の景気後退とは言えない。
何らかの過剰の調整として起こった景気後退ではない。
マークス氏は、2020年を例外と見るべきと書いている。
ならば、現在は「回復の14年目」となり、過去最長記録9年を大きく上回っていることになる。
ただし、だからと言ってマークス氏は、現在がバブルだとか、近く崩壊するとかと予想するわけではない。
マークス氏は個別の資産クラス・セクターについて自身の見方を語っている。
- 米国株: 過去の平均より高いPERは逆風になるかもしれない。20倍台前半は「高い」が「ばかげた」水準ではない。
- 商業用不動産: 依然として脆弱。
- 地方銀行: 「システミック」ではなく個別の問題。
- FRB金利操作: 「短期イベント」であり「長期的重要性はない」。
現時点でマークス氏には赤信号は見えていないようだ。
市場が異常な領域にある、近く大幅な下落の可能性が高い、あるいはそのため大きく防御を増やすべき、とは言えない。
マークス氏は、金利という観点から(不確実な)投資リターンについて解説している。
「この分野で重要なのは、私が思うように今後5-10年の間、金利が3.0-3.5%に居座るのか、それとも2009-21年の大半のように0-2%レンジに回帰するのかだ。
もしも前者なら、結果として幸せだったあの頃より株式リターンは下がり、レバレッジ投資戦略の優位性は減り、クレジットのリターンは以前より目覚ましく改善するだろう。」