そこで、ドットコム・バブル後のウォーレン・バフェット氏・チャーリー・マンガー氏が、どのように退屈な日々を過ごしていたのか、バフェット氏の2003年2月付け株主宛て書簡で見てみよう。
バブルがピークを打ったのが2000年3月だから、そこから3年近く経っている。
株式では引き続きほとんど何もしていない。
チャーリーと私はバークシャーの主な投資先の保有にますます満足している。
これらのバリュエーションは低下しているものの、利益は増えているからだ。
しかし、買い増すつもりはない。
これら企業はよい見通しだが、まだ株が割安だとは思わない。
バフェット氏は、割安でないバリュエーションについて、株式市場全体の話と一般化している。
ドットコム・バブルは、あまりにも割高な水準まで行きついたため、ピークから3年経っても市場は(バフェット氏らにとって)割安とはならなかったのだ。
では、彼らのハードル・レートはどれほどだったか。
少なくとも10%の税引前リターン(法人税後で6.5-7%)でなければ、まだ待機しようと思う。
短期資金の利回りが税引後で1%未満であることを考えれば、待機するのは楽しいことではない。
しかし、時として投資の成功には何もしないことが必要になる。
短期の利回りが1%未満というのは、ディスインフレ時代を連想させる。
あまり単純化はよくないのかもしれないが、10%リターンを益回りととらえるなら、PERは10倍。
ディスインフレ時代にPER 10倍だと、さぞかし投資はしにくかったろう。
お家芸の株式投資が開店休業だった中、バフェット氏らはどう時間をつぶしていたのだろう。
「昨年、いくつかの『ジャンク』債とローンへ分別ある投資を行った。
全体として、わが社のこのセクターへのコミットは6倍となり、年末までに83億ドルに達した。」
バフェット氏は、株式投資とジャンク債投資には銘柄選別という共通点があると分析。
一方、バークシャーが投資してきた株式は優良企業なのに対し、ジャンク債の発行体は真逆のタイプであると述べられている。
さて、この先まだ株式が上昇を続け、その後の調整が緩やかだった場合、堅実な投資家はひどく長い年数を傍観者で通さざるを得なくなる。
この退屈さに耐えられるのか、胆力を試されることになるかもしれない。
ちなみに、ドットコム・バブルはロバート・シラー教授が調べた米市場の150年の歴史の中で(CAPEで見て)最大の株式バブルだ。
しかも、住宅バブルと比べればあまり救済(・抑止)する必要のないバブルとも言える。
これが待ち時間を決めたのかもしれない。
(参考)主なシラーCAPEのピーク:
年月 | CAPE |
1929年9月(ウォール街大暴落前) | 32.56 |
1999年12月(ドットコム・バブル) | 44.20 |
2007年5月(米住宅バブル) | 27.55 |
2021年11月(パンデミック明け) | 38.58 |
2024年3月(予) | 33.98 |