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カタリストがまだ現れていない:ジェフリー・ガンドラック
2024年6月16日

ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏の11日付のウェブキャストが公開されている。
(今月のFOMC(11-12日)の結果発表前に行われたウェブキャスト)


今回のウェブキャストのタイトルは「1968」。
ベトナムで戦争が続き、米国では国が分断され暴力が吹き荒れた年だ。
ガンドラック氏は51分間のウェブキャストの冒頭7分余りを費やし、当時起こったことを列挙した。
この話は同年末のニクソン大統領候補勝利までを描写している。

こんなに長い時間を費やしたのだから、ガンドラック氏には強い思いがあるのだろう。
これから米社会が同様に荒れる可能性を見ているのだ。
言うまでもなく、翌1969年からのニクソン政権ではいわゆるニクソン・ショックが起こり、1つの経済システムが終焉した。

これら景気後退の指標がなぜ当てはまらないのかよく聞かれる。
私の答はかなり明白で、財政・金融の両方からボラティリティの高い経済政策が実施されているためだ。
ゼロ金利、一部の国ではマイナス金利政策が採られ、大量の貨幣増発があり、そしてFRBは500、525 bpもの急激なFF金利引き上げを行った。

ガンドラック氏は近年コンセンサスより弱い見通しを述べてきた。
昨年には、今年半ばまでの景気後退入りを予想することもあった。
しかし、今のところそれは実現しておらず、同氏も時期まで付した予想をあまり口にしなくなっている。
景気指標の中には(長く続くイールドカーブ長短逆転をはじめ)景気後退のシグナルも見え始めている。
それなのに景気は多くの市場関連者にとっても予想外に強い。

ガンドラック氏は、この例外的な状況が、財政・金融政策の極端な振り子に根差すと考えている。
長らく逆転が続いている長短スプレッドのチャートを見つつ、1970年代、80年代初めと少し似ていると指摘した。
また、景気後退入りの直前に長短逆転が解消する経験則にも触れた。

米2年10年スプレッド
米2年10年スプレッド

これがゼロを超えれば、市場にとって本当の赤信号となる。
まだそこには至っていない。
条件は揃いつつあるが、カタリストがまだ出現していない。
でも、経済は鈍化してきた。

その他、興味深い発言:

  • コモディティ: 底を打ちつつあるように見え、要注目。
    景気後退でドル安が始まれば面白い。(訳注:円建てで面白いかはもちろん言及されていない。)
  • 帰属家賃: 今後低下し、CPI押し下げ要因になる。
  • 自動車保険: 無保険ドライバー、強盗・窃盗の増加、修理費値上げが効き、年22%の価格上昇。
    「1968年の数年後のように社会状況が急激に変化しない限り、価格は低下しないのではないか。」
  • 銅/金比率: (インフレ予想の)役に立たない状況が続いている。
  • 社債: BBB格(投資適格)からBB格(不適格)への乗り換えはよくない。
    利回りは大きくなるが、それはハイイールドのデフォルト増予想に対応したもの。
  • 米国株 対 EM: S&P 500が再び新興国市場株をアウトパフォームし始めたが、トレンド転換まで逆らってはいけない。

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