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ジェレミー・シーゲル教授、FOMCを読み解く

《永遠のブル》ジェレミー・シーゲル教授が、市場の利下げ期待やバリュエーションに潜む不安要因を丁寧に否定している。


「FRBが50 bpの利下げに踏み切るには、相当に悪い小売売上高が必要だ。
だから、私は25 bpの利下げを強く予想する。
それが適正水準というのではなく、私はもっと速い利下げを望んでいる。」

シーゲル教授が17-18日のFOMCを控え、ウォートンビジネスラジオで金融政策の行方を予想した。
FOMC前の最重要データとして8月の小売売上高(17日発表予定)を挙げ、それが50 bpの利下げを正当化するほどには悪化しないと予想したもの。
CME FedWatch Toolによれば、13日時点での市場による18日の利下げ幅予想は25 bp、50 bpで半々となっている。

シーゲル教授は、来年6月FOMCにかけてのFF金利を次のように解説する。

  • 市場の織り込みは-230 bp、1回を25 bpとすると「9回分の利下げ」。
  • リスク市場での下方リスクのヘッジのため、先物の金利水準には「負のリスクプレミアム」が含まれ、50 bp程度と推測。
  • 市場の利下げ予想回数は実際には7回分。つまり、7回のFOMCで各1回の計算。
  • 7回利下げ後の3.50-3.55%は、教授想定の長期中立金利3.50-4.00%と同水準。

何が言いたいのかと言えば、市場が利下げを織り込みすぎているとの懸念を払拭したいのだ。
来年6月までで9回分の利下げがなくても、7回分があれば、期待外れとはならないと言いたいのだ。
(ちなみに、実際に経済が悪化する場合、利下げは9回の方向に寄って行くとの解説だが、これは煎じ詰めればFRBプット思考そのものにも聞こえる。)

シーゲル教授のブル応援歌はバリュエーションでも続く。

  • 市場全体のPER 20倍は、益回り5%に当たり、これは実質期待リターン5%と擦りあう水準。
  • 現在の物価連動債利回り(実質金利)は1.6%超で、上記との差は3.3%。
  • この水準は過去220年で見た株式の債券に対する超過リターンと一致する。

何が言いたいかと言えば、現在のリスクプレミアムはちょうど長期平均と合致しており、割高感はないと言いたいのだ。
強気派には力強いメッセージだろう。

一方で、市場では先物金利に「負のリスクプレミアム」を載せるだけの弱気が存在するのもシーゲル教授が認めたファクト。
あなたはどちらを信じますか?


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