ビル・グロス氏がXに「『音楽が死んだ日。』」で始まるツイートをつぶやいている。
「音楽が死んだ日」とは1959年2月3日のこと。
小型飛行機に搭乗した3人のロックスターが墜落事故で亡くなった日だ。
当時は戦争、不祥事、犯罪などでロック・スターたちが次々とフェイドアウトしており、さらに3名が亡くなったこの日を「音楽が死んだ日」と呼んだ。
グロス氏は何が死んだと暗示しているのか?
今はバリュー株にしがみつき、テックを避けろ。
パイプラインのMLPはまだ勢いがあるが、つっこみすぎるな。・・・
どうしてもテックなら、マイクロソフトが一番いい。
どうやらテック株に危うさを感じているようだ。
一方、これまで数年お気に入りだったMLP(残念ながらこの商品の税制上の利点を日本人は享受できない)についても抑制的な言い回しになっている。
グロス氏は背景を語らないが、インフレと金利の方向性にかかわるものかもしれない。
10年債利回りは4.75%まで動いた。
どうして債券を持つのか?
Tビルの利回りが5.25%なのに。
つい最近まで、米長期債に投資する主たる理由は魅力的なクーポンに加え、利下げ、金利低下によるキャピタル・ゲイン期待にあった。
しかし、CPIは思うように下がらず、GDPも予想外れになると話は少し変わって来る。
成長鈍化は利下げを支持するだろうが、CPI高止まりはそうでないどころか、逆に利上げの可能性さえ生み始めている。
株式へのインプリケーションはどうか。
昨年半ばぐらいまで、金利上昇は遠いキャッシュインの現在価値を減らすことから、(大手テックなど)グロースに不利とされてきた。
しかし、最近では、金利上昇は経済成長の改善によるもので、この恩恵を受けるのはグロース、とのナラティブが優勢になっている。
グロス氏のテック株非推奨は、そのナラティブにくさびを打ち込むものだろう。
経済成長に疑義が出れば、現在のナラティブのシナリオは否定される。
残るのは、遠いキャッシュインの現在価値低下である。
グロス氏のツイートは、経済認識をややスタグフレーション的な方向にシフトさせたものだろう。
同氏は債券をアクティブ投資にした、まさに初代の債券王だ。
機関投資家としての終盤、債券投資ではあまり目が出なかったが、機関投資家を卒業後は株式投資でこまごま当ててきている。
根っからのトレーダーで、堂々と1959年の悲劇を引用する度胸も健在だ。