あまり真に受けてもらっても困るのだが、あと数十年は生きるであろう筆者がいつも心配しすぎていることを紹介しよう。(3月3日 浜町SCI)
心配事なので当然いいことではない。
そんなに差し迫った話だとも信じたくない。
だから、性急に真に受けないでいただきたい。
FRBがかなり大胆に金融引き締めを続けているから、特に米国についてはこの心配事がすこし後倒しになったと考えている。
言い換えると、米国で多少悪いことがあっても、金融緩和余地が大きいから、そこそこ対処できるのだと思う。
対処後に米国は財政政策も金融政策も伸びきった状態になるから、その後が本当の心配になっていく。
さて、筆者の心配事は日本だ。
2年ほど前弊社が上梓した『超長期サイクルが終わる時 – フィナンシャルポインター流 投資家研究』の第4章に書いた内容が今の日本と一部重なる。
(同著は、ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏の行動・発言をまとめたもの。
弊社が都合によりブログを一時休止するにあたり、長期投資家にとって特に重要と考えていたメッセージを伝えるために用意した。)
「資金逃避と通貨防衛」と題した節に筆者の心配事が集約されている。
ある通貨が下落を始めた場合、その下落分を金利差で補う(相対的に高い金利を付す)ことができないと、国債と通貨の魅力がなくなってしまう。
長期債務サイクルが終期を迎えると、定義からして莫大な債務を抱えているため、金利は引き上げられない。
それで国債と通貨が売られてしまう。
結果、低金利を望みながらも、金利は上昇し、通貨は下落し、インフレ的不況を引き起こす。
外国資本は外国に逃げ帰り、さらに国内資本も外国に脱出し、資本が不足し、通貨が下落する。
政府・中央銀行は通貨防衛(為替介入、利上げ、口先介入、外為規制)を試みるが、こうした通貨防衛・為替管理が成功することはほとんどないという。
通常6か月程度で行き詰まり、外貨準備が10-20%減ったところで放棄されるという。
結果、当局は通貨下落を容認するしかない。
ちなみに、貨幣増発はそもそもの原因なので、解決策にはならない。
国債を買い支えれば代わりに通貨が下がる
上記はダリオ氏が調べた過去の典型例を紹介したものだ。
すべての国でこうなるという話ではない。
筆者自身も、国債が売られるタイミングについてはかなり遅くなると考えている。
先に通貨が売られ、かなり後に国債が売られるのではないか。
リスクの高まりが(その一因が財政であっても逆に)マネーをリスクフリーと解釈される投資先(この場合は国債等)に向かわせるとの意見もあるからだ。
近年、国債はひどく売られていないが、通貨は売られた。
この3年でドル円は110円から150円。
円ドルで言うと1円=0.91セントから0.67セントへの26%の下落だ。
国債が売られていないことを喜ぶべきでない。
気づかないのは貨幣錯覚にとらわれた日本人だけ。
アメリカ人からすれば、3年前に100円=91セントだった日本国債は今や67セントだ。
ドルが唯一絶対の価値の単位ではないだろうが、日本国債がひどく減価したと考えるのは間違いではあるまい。
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