トランプ政権が多くの国について計算した、関税と非関税障壁を総合した対米関税率についてCNBCが強く批判している。
記事だけでなくビデオまで作っているところに憤りの大きさが表れている。
政権は、その国との貿易赤字を輸入で割って、得られた数字、率を、為替だろうが税金だろうが関税だろうが関係なく、米国から奪ったものとみなしている。
2日米政権の提示した各国の関税率についてCNBCは、驚くほど単純で論理性のない計算によって得られたものであると暴露している。
米国が提示した、ある国が米国に課す関税率(日本は46%とされた)とは事実上、米国の貿易赤字を輸入で割ったものにすぎなかった。
この計算法は、数字の発表後、世界中の人々がリバースエンジニアリングによって発見し、驚きとともに公表していた。
米通商代表部は計算法を公表している。
CNBCは、この計算法についてのホワイトハウス職員のコメントを紹介している。
「これら関税は国ごとに計算されている。
数字は経済諮問委員会によって、とてもとても確立された方法で計算されたものだ。」
自信満々の言いぐさとは逆に、政権外でこの方法を支持する人はほとんどいないようだ。
当たり前だ。
根本的に考え方がおかしいためだ。
日本では、米国が提示した数字について農水大臣が「全く根拠が分からない」とコメントしたと報じられた。
わからないはずだ。
理屈に適っていないのだから。
大臣としては、当初用いられた《コメに700%》という間違った例と同様、農業を悪者にされたくないのだろう。
ただし、付け加えるなら、700%や46%が間違っているにしても、たとえコメについて関税のかからないミニマムアクセスが用意されているにしても、一部に高率の関税があるのは事実。
それが米国との関係、また国内他産業との比較で妥当なのか、いつも検証を続けておくべきなのは言うまでもあるまい。
さて、米政権の計算法の稚拙さを嗤い、あきれてきたが、その理由を説明しておこう。
それは、米通商代表部自体が開示の最初に書いているのだ。
「相互関税は、米国とそれぞれの貿易相手国の間の二国間の貿易赤字を均衡させるために必要な関税率として計算されている。
この計算が仮定しているのは、持続的貿易赤字が、貿易均衡を阻害する関税・非関税要因の組み合わせによるものということ。
関税は、輸入の削減に直接的に効果を上げる。」
トランプ関税のそもそもの大義名分とは何だったのか?
関税や非関税障壁による不公正な貿易慣行を取り除くためではなかったのか。
貿易赤字の原因には不公正な慣行もあろうが、そうでないものも多くあるはず。
しかし、米通商代表部は、純輸入を悪とし、その責任を一方的に相手国に押し付けているのである。
(CNBCの記事やビデオでは、計算根拠にサービスが入っていないこと、その他もろもろの問題点も挙げられている。)
この稚拙な計算法の最大の問題点は、結果的に公正な通商につながらない点だろう。
不公正な慣行のある国がそれを撤廃したからといって、それがすなわち米国の純輸入を有意に減らすとは限らない。
この計算法に従う限り、目的は不公正な慣行の撲滅ではなく、純輸入の減少になってしまうからだ。
交渉過程で相手国は戸惑い、合意へのモチベーションを維持できないかもしれない。
理屈の通らない米国との交渉は長く続くと覚悟しなければいけない。
世界貿易では三国間貿易が増えるかもしれないし、米国はそれに再び税率引き上げで対抗するかもしれない。
しかし、結局のところ、米国が現状の貿易赤字を内製化するまで不均衡は続く。
そして、そんな内製化ができるわけがない。
内製化のために設備投資をすれば、その設備投資も内製しないといけない。
さぞかし米経済の内需は拡大し、供給力もその分増え、効率は上昇するのだろう。
この混乱は、米政権がこの単純な理屈に気づき、認めるまで続くのだろうか。
それとも、彼らは見た目よりはるかに邪悪で、貿易均衡以外での目的を持ち、世界各国にマールアラーゴ合意により、為替相場とともに金銭的要求を投げかけてくるのだろうか。