ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、米ドルの次の基軸通貨について質問を受けている。
いいや。
すべての通貨が悪化していく時代に入りつつある。
ダリオ氏がコロンビア・ビジネススクールでのインタビューで、質問に答えた。
米ドルの基軸通貨としての地位が揺らいでいるのかとの質問だった。
ダリオ氏の観察によれば、債務の超長期サイクルの終期において「MP3」(協調的な財政・金融政策≒貨幣増発)が採用される。
そして伸びしろが尽き、そのサイクルが終焉を迎える。
大量の貨幣増発によりその時代の基軸通貨が大幅に減価し、交代を迫られることになる。
ただし、これは新たな基軸通貨が存在する場合の話だ。
ダリオ氏はユーロ、円、人民元を例にとり、「不美人競争」の最中だと話す。
ただし、だからといって安心もできないらしい。
ドルは交換手段であり続けるのだろうが、富の保蔵手段としては有効でなくなるのだろう。
ダリオ氏は、富の保蔵手段の1つの条件として、他国が受け取ることを挙げている。
その点で金を最良の保蔵手段と言い、問題はあるとしつつもビットコインほかの可能性にも言及した。
多くの人は暗号資産はおろか、金にしてもここまで高くは買わないのではないか。
なぜ、ダリオ氏はこれらを高く買うのか。
どうやら通貨間の「不美人競争」の原因にあるようだ。
同氏はそれを「空白(地帯)がある」と表現している。
基本的な問題とは、各国中央銀行が信用に置けないところにある。
・・・みんな過剰な債務を抱え、みんな苦境にあり、誰が耐え抜くのか?
ある国が通貨安にすれば互いに競争することになる。
日本人には特に耳の痛いところだ。
過去数年、ダリオ氏がブリッジウォーターの経営・投資からフェイドアウトするのと重なるように、同社ファンドが不調に陥ったように見えている。
メディアはリターンの数字を示し生煮えの説明をするだけだ。
メディアが言うように、この帝国が(超長期債務サイクルより一足先に)凋落に向かっているのかはわからない。
ただ、ダリオ氏が自信を失った様子は見えない。
運用生活33年において、パンデミックまでで愛悪だった年は7.9%(のロス)だ。
33年のうち30年はプラスで、平均は約11-12%。・・・
パンデミック(の年)で12%のロスを出したが、わが社のリターンは他の資産クラスや運用者と相関がないので、機関投資家にとってすばらしい資産だったんだ。
もちろん、いかに相関がないからといって大きなロスを垂れ流しても「すばらしい」という話にはならない。
他の資産クラス・運用者が悪い時には、自分たちが大きく稼ぐとの自信の表れだろう。
リーマン危機時がまさにそうだったが、ダリオ氏が一線を退いた今、同氏が残したマシン(業務や意思決定のアルゴリズム)は次も輝かしい成果をもたらすのだろうか。