オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏による「リスクの考え方」の第8回「リスクとリターンの関係」: リスク/リターンのトレードオフにモノ申している。
今回のテーマは、これまでも度々語られてきたリスク/リターンのトレードオフについてだ。
マークス氏は以前から下のトレードオフのグラフを用い、リスクとリターンの関係を明確化してきた。
(出典:Oaktreeのビデオより)
横軸にリスク、縦軸にリターンがとってある。
右肩上がりのグラフで表されているのは、ローリスク=ローリターン、ハイリスク=ハイリターンの関係。
とてもオーソドックスな考え方だと思う。
しかし、マークス氏はこれに異論を唱えている。
「ほとんどの人はこのグラフを見て2つの意味があると考えるだろう。
高リスクの資産はリターンが高い。
儲けたければ、リスクをもっと取ることだ。」
3つ目の文はまさにハイリスク=ハイリターンの関係を述べたものであり、多くの人が認める現実だろう。
しかし、マークス氏はこの考えを「最悪の定式化」と呼んで理由を挙げている。
もしも高リスクの資産が高いリターンを生むなら、高リスクのリターンはリスキーじゃないじゃないか。
マークス氏は、このパラドックスの種明かしをしているが、重複となるので既報記事に任そう。
煎じ詰めれば、ファイナンス理論におけるリスクの定義とマークス氏の定義が異なることで、上記がパラドックスに見えているのだ。
ファイナンス理論もマークス氏も間違ってはいないが、自然言語の中で暮らす人たちにはマークス氏の説明の方が理解しやすいだろう。
結果、危うい誤解が生まれなくなる。
(次ページ: 右肩下がりのトレードオフ)