オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、今後の株式・クレジット市場の状況についてコメントしている。
「みんな不確実性に直面している。」
マークス氏が社内での対談で、投資を取り巻く不確実性を指摘した。
国内外の対立や気候変動などマクロ外生的不確実性のほか、経済的要因(インフレ・金利・経済成長)での不確実性を意図したもの。
同氏は、マーク・トウェインのお気に入りの格言を紹介する。
「『あなたを問題に巻き込むのは知らないことではない。
確信をもって知っているのに、そうでないことだ。』」
知ったつもりになることの危険さを諭している。
さらに、これを市場での営みに敷衍する。
「とても大勢の人が、何が起こるか確信していると言い、それに大きく賭けて、すべての賭けが一方方向になれば、バブルが生まれクラッシュすることになる。」
オークツリーはマクロ予想を投資判断に用いない。
その一方で、マークス氏が著書を上梓しているように、市場サイクルについては大いに関心を持っている。
マークス氏は、2020年のパンデミック時が景気後退だったのか、やや形而上学的に語っている。
通常の景気後退ではなかったが、仮に景気後退でないとすれば、景気拡大は15年も続いており、これは異常な長さだ。
仮にそうだとしても、同氏は景気拡大の長さで今後を占うつもりはないようだ。
「今はサイクルのどこなのか?」との自問に対し「わからない」と話している。
こうした会話の後、インタビュワーは今後の市場・経済環境を尋ねているが、マークス氏の答は大いに無知の知を含んでいる。
- 経済: かなり良好。これがフェイントかどうか、何が悪化するのかはわからない。
- 金利: 次は低下だろうが、確度100%ではない。
- 利下げ: 数回ありそうだが、6回はない。年末のFF金利は4%台半ば。
- 株価: 良好な環境を織り込み済み。S&P 500のPERは平均を大きく上回っているが「ばかげたほどではない」。
- クレジット: クレジット・スプレッドは「たっぷりではない」。
やや曖昧なマクロ認識でもしっかり稼ぐのだから、同社のミクロの分析・判断力の優秀さがうかがわれる。
マークス氏の結論は、現状が(投資判断の容易な)極端な状況ではないということのようだ。
概して良い見通しが織り込まれている。
バーゲンはないが、ばかげたバブルでもない。