オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、「予見はできない。準備はできる」と題した2001年のMemoについて回想している。
同氏はこのタイトルを大手保険会社のキャッチコピーから流用したのだという。
「とても啓発的な言葉だ。」
マークス氏がMoney Maze Podcastで、このキャッチコピーを褒めている。
私たちはこのコピーからどう啓発されるべきだろう。
「何が起こるかわからないなら、どうやって起こることに対する準備ができるのか?
答は、もしも自分が起こることを予見できると考えるなら、愚か者だということ。」
マークス氏は、私たちが「確実でない世界」に暮らしているという。
将来が予見できないことを認めた上で採るべきスタンスを説いている。
「準備するという意味は、1つの結果に対しての準備ではなく、ポートフォリオあるいは人生の生き方について幅広い結果に対して準備することなのだ。
そうすることが成功につながる。」
ところが、市場内外には利口ぶった《識者》が溢れかえっている。
「投資業界では、経済はこうなる、金利はこうなる、市場はこうなる、この産業はこうなる、この企業はこうなると話す人が多すぎる。
これら5つすべてを予見できれば大金持ちになるだろうが、すべて正しく予見する確率はどれだけあるのか?・・・
もしもあなたがあたかも確実に自分が正しいかのように1つのシナリオに決め打ちして投資して、結果いくつかサプライズがあれば、あなたが組んだポートフォリオは完全に間違い、的外れで、悲惨な結果になるかもしれない。」
2025年3月 ハワード・マークス氏インタビュー
マークス氏は、投資家が自身のポートフォリオに求めるべき条件を端的に列挙する。
ポートフォリオとは、最も確率の高いことが起こった場合によいパフォーマンスでなければならず、他のありそうなことが起こった場合にかなりよくなければならず、起こらないと思っていたことが起こった時にも悲惨なことにならないものでなければならない。
マークス氏は、これが簡単ではないことを認めている。
また、すべてのシナリオに対して最適な準備をすることが不可能であり、ある程度の取捨選択が必要になるとも話している。
マークス氏は、将来が予見不可能なものだと信じている。
ただし、将来に対する予見力に関して、長けた人と劣った人がいることも認めている。
さらに、最近ではAIやロボ・アドバイザーなどコンピューター科学を駆使した投資手法も発達している。
同氏は、投資業界を目指す人々に極めて現実的で残酷なアドバイスを贈っている。
私は、世界で最も賢いコンピューターでも、最も洞察力のある人間ほどの洞察力はないと信じたい。
しかし、この職業の問題とは、最も賢いコンピューターが80-90%程度の人間より洞察力を有しているかもしれないことだ。
だから、結論は、あなたがトップ数%でないなら、投資業界に入らない方がいいということだ。