バブルのピークから4年弱後、2004年2月付けの2003年度の書簡
2003年度もバークシャーは大きな投資を行っていない。
ウェルズ・ファーゴの買い増しがあり、取得価額が306百万ドルから463百万ドルになっているが、バークシャーの体格から見れば僅少だ。
「保有するポートフォリオについて、私たちは熱狂的でも消極的でもない。
私たちは優れた事業の一部を所有しており、昨年そのすべてが根源的価値を大いに増大させた。
しかし、現在の株価はその優秀性を反映している。」
投資先の業績は拡大したが、それは株価に反映されている。
結果、買い増すほどの妙味を感じていないとの判断なのだ。
保有銘柄がフェアバリューであるとの見方は、バフェット氏に反省を促している。
この結論から導き出される不愉快な推論とは、巨大バブルの最中に大口の保有銘柄のいくつかを売らなかったことが大きな誤りだったということだ。
これら株式に現在十分な価格が付いているのなら、4年前に根源的価値が低く価格がはるかに高かった時に何を考えていたのかと思うだろう。
私もそう思う。
バブルで持株の価格が上昇し割高になったら、長期投資から離れて、持株の全部または一部を売却すべきなのか。
もちろんバブルとわかっているなら、売るべきなのだろうが、それは事後にわかること。
オマハの賢人でさえ、事前に適切な対応をとれていなかった。
ちなみに前年に割安と見て買ったジャンク債は値上がりしたために妙味がなくなったと書かれている。
一方、新たな資産クラスとして「人生初めて外国為替市場に参入した」という。
米ドルについて「ますます弱気になった」のだという。
近年我が国の貿易赤字は米国に対する巨額の請求権、所有権を世界の諸外国に押し付けている。
しばらくは、これら資産への諸外国の食欲が供給を吸収できるだろう。
しかし、2002年終わり、世界による消化が滞り始め、米ドルの価値は対主要通貨で下落し始めた。
そうでありながら、為替の勢いにより貿易赤字が大きく減少することはないだろう。
外国の投資家が好むと好まざるとにかかわらず、ドルが溢れかえることになろう。
どうなるかは人々の推測によるしかないが、為替市場をはるかにこえた問題になるだろう。
これがバブル崩壊後4年近くたった時点のバフェット氏の心配事だ。
双子の赤字という時限爆弾が、米国からなくなることはないようだ。
バフェット氏はアメリカ人として、これが杞憂に終わるよう願っている。
その一方、莫大なドル資産を保有するバークシャーの経営者として、このリスクの一部をオフセットする為替契約が必要だったと説明している。
長年、米国の社会・経済・株式にこだわりを持ち続けて投資を続けてきたバフェット氏。
投資の大半は国内に狙いを定めていても、ドル安リスクには対処したいということだろう。
さて、全体を振り返って見ると、バブルはバフェット氏らに長く退屈な時期を強いたように見える。
同氏は待機資金についても書いている。
エキサイティングな投資先が見つからない時、私たちの『デフォルト』のポジションは米国債(Tビルとレポの両方)だ。
これら商品の利回りがどんなに低くなろうが、私たちの信用基準を引き下げたり期限を長くしたりしてもう少し多くのインカムに『手を延ばそう』とは決してしない。
短期のリスクフリー資産で待機し、十分に妙味のあるチャンスを待つ。
実に堅実な方法と思う一方、こうしたスタンスが今世紀のバフェット氏の凡庸な成績を生んだのかもしれない。
堅実な投資家にとって、バブルとは付き合いにくいものだ。
煎じ詰めれば、一般投資家にできることといえば、
兼業投資家であれば、本業に打ち込むこと、
専業投資家なら、今から投資より楽しい趣味でも探しておくこと、
だろうか。
いやいやそうではあるまい。
バフェット氏の反省を真に受けるなら、長期投資の原則を妥協し、割高な持株を売ることかもしれない。
もちろん、そのためには常に持株のフェアバリューを知ろうとする継続的な努力が必要になろう。