アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、20世紀のバリュー投資への批判を続けている。
その中には今世紀のバリュー投資についても当てはまるものがある。
「私が『どうやったらバリュー投資家になれるのか?』と尋ねると、『低PER株を買えば大丈夫』と彼らは答えた。」
ダモダラン教授がThe Motley Foolで、以前バークシャー・ハザウェイ株主総会のためにオマハに集まった300人の「バリュー投資家」を自称するポートフォリオ・マネージャーとの対話を回想した。
ちなみに、彼らのほとんどは企業の評価を行ったことがなかったそうだ。
ダモダラン教授が20世紀のバリュー投資を批判してきたことはFPで度々紹介してきた。
投資家で言えば、ベンジャミン・グレアムや初期のウォーレン・バフェット氏だ。
彼らをディスるというのではなく、そのやり方はもはや通用しないとの指摘だった。
教授は自称「バリュー投資家」の投資戦略の本質を看破する。
「これは平均回帰だ。
その考えが基本的に投資戦略の全体を動かしている。・・・
平均回帰では超過リターンを得たり市場を負かしたりできない。
史上すべてのバリュー投資の90%は平均回帰を狙うものであり、うまくいかず、市場が非合理に動いたと投資家が嘆いても同情しない。」
ダモダラン教授は、20世紀には平均回帰がうまく機能したと語る。
GE、GM、Fordなどとても長いライフサイクルの企業が存在したためという。
こうした企業は山あり谷ありでも長く長く続いてきた。
ダモダラン教授は、新たな企業のありようとして20世紀終わりのYahoo(米社)を挙げている。
1992年に創業し、1999年にピークを迎え、2003年に凋落が始まり、2015年に「死んだ」。
「企業のライフサイクルは短期化し、短いライフサイクルでは平均回帰の仮定は最も危険な投資の仮定になりかねない。
企業としての死に向かい、ライフサイクルが地滑りを起こすところに賭けることになってしまう。」
21世紀の企業はライフサイクル自体が短くなっているので、平均回帰を待っている暇はないとの観察だ。
しかも、ダモダラン教授の立ち位置は投資前にとどまらない。
「人間と同様、企業にとっても高齢化が自然な成り行きであることをより早く受け入れるほど、よい結果になると思う。」
《第2のAppleやMicrosoft》といったセールストークでコンサルタントや銀行家が凋落の時期を迎えた企業を食い物にしているという。
これが回り回って投資家のコストになる。
ダモダラン教授は「バリュー投資優越の世紀は終わったとし、もう1つの理由を挙げた: 容易すぎることだ。
20世紀のバリュー投資に必要なデータは、今や金融サイトで簡単に閲覧できる。
これでいつも勝てるはずがない。
教授は拾うのが簡単すぎるのと同様、捨てるのが簡単すぎる点も問題視する。
「バリュー投資家の間違いは、見る前からこれら(グロース)企業を除外してしまう点だ。
私が言いたいのは『《決して》とは決して言うな』ということ。」
PERやPBRを見てグロースを除外してしまえば、そもそも価値の評価さえ行われない。
ダモダラン教授は、きちんと価値を評価した上で価格を吟味すべきと考えている。
《バリュエーション学長》は「すべては価格次第」と宣言している。
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