アスワス・ダモダラン教授は、銘柄選択の時間軸についても語っている。
「会社を見てみて欲しいと思ったら諦めてはいけない。
注目し続け、評価を続ければ、買える会社になる時が来る。」
ダモダラン教授は今は高いNVIDIA株と最近下げたTesla株を保有している。
株価が投資できるか否かは時間とともに変わる。
NVIDIAは2018年に買える株価だったし、Teslaは最近そうなったわけだ。
ダモダラン教授は、2009年以降の長い長い強気相場で言い続けてきた点を繰り返している。
「(グロース)銘柄にも選択されるチャンスを与え、それを排除する指標、PER・PBRで見るな。
もしも『PERが25倍超の株は買わない』という絶対的ルールで投資すれば、助けようのない状況になる。
ポートフォリオの中身は死につつある会社かバリュー・トラップだけになる。」
企業のライフサイクルの短期化と関連しているポイントには会計(簿価)の質が挙げられよう。
前世紀と比べて、会計で認識しにくい要素が増えている。
最たるものが無形資産だ。
ダモダラン教授は、自身の資産の定義を「期待キャッシュフローを生み出すもの」と話している。
「これこそ私がバリュー投資がとても危険な投資アプローチと考える理由だ。
・・・簿価は会計によって記録され、会計士はわかっていない。」
無形資産を企業会計に取り込もうという努力が進められてきたが、ダモダラン教授はこれに否定的だ。
しばしば無形資産やのれんの消却や突然の消滅が発表されサプライズとなるのは周知のとおり。
「私は無形資産を評価できるし、容易だが、会計士がそれをバランスシートに織り込むのはやめてほしい。
会計士はめちゃめちゃにしてしまう。
会計士は古来の会計に専念し、バリュエーションの扱いは私や他の人たちに任せるべきだ。」
これは、多くの市場関係者が思っている点だろう。
客観的とは言い切れない手順でいじられた数字より、ファクトそのものの数字を見たいとの思いだ。
それにもかかわらず、会計士が無形資産を反映させたがる背景として、ダモダラン教授は「会計を再び重要と感じたい」との会計士の願望を挙げている。
バリュー投資の是非が議論されたこともあり、インタビューでは、最近のデービッド・アインホーン氏によるバリュー投資についての議論も話題に上った。
ダモダラン教授はこの問いかけに対し、いわゆる「グロスマン-スティグリッツのパラドックス」で答えている。
「みんなが市場を効率的と信じれば、市場は非効率になる。
みんなが市場を効率的と信じれば、誰も市場の誤りを探さないからだ。」
ダモダラン教授は、これがパラドックスであるがゆえに一方方向ではないと答えている。
「みんなが市場を効率的と信じれば、パッシブ投資を始める。
市場の誤りが大きくなれば、アクティブ投資家が戻ってくる。
市場を保つのにそんなにたくさんのアクティブ投資家は要らない。」