さて、グリーンライトがこの書簡に込めた主題、読者が期待する内容は、上記ではないだろう。
みんなの興味の中心は、アインホーン氏が昨年から繰り返し話す「完全に壊れてしまった」市場の話であるはずだ。
実は、この書簡の1-2ページはその話題に充てられている。
壊れた市場について、とても平易に説明しているのだ。
まずは市場参加者で増えているタイプを示している:
- バリュエーションに無関心(パッシブ)
- バリュエーションできない(教育を受けていない)
- バリュエーションを見ない(テクニカル、クォンツなど)
根源的価値を探求し、それとの比較で投資を行うバリュー投資はどんどん少数派になっている。
とりわけインデックス投資などパッシブ投資は大流行だ。
「実際、あまりにも多くのお金がパッシブ戦略に配分され、それらはもはやプライス・テイカーではなくなっている・・・
かわって、これら戦略はプライス・メイカーとなり、そのフローは価格の重要なドライバーとなっている。」
パッシブ(受動的)だったはずのパッシブ投資がパッシブでなくなり、市場価格を歪めるとの指摘だ。
インデックス・ファンドの大流行が不合理な市場価格を生む前半部分はこうだ:
「公正価格ベースでともに10億ドルの価値がある2つの企業があるとする。
1社は市場で5億ドル、もう1社は20億ドルの値がついているとする。
時価総額加重平均インデックスによるファンドがこれら2社に5ドルを投資する場合、4ドルを20億ドル企業に配分し、5億ドル企業には1ドルしか配分されない。
割高株は4倍のニューマネーを得ることになる。
結果、割高株はアウトパフォームし、割安株はアンダーパフォームする。」
容易に理解できるが、このロジックは自己強化的なサイクルを形成する。
ニューマネーが入る限り、不合理が不合理を生む循環になる。
趣旨は違うが、マルクス流に言うなら、富める株はますます富み、貧しい株はますます貧しくなりかねない。
さらにこの問題には後半部分がついてくる。
(必ずしもニューマネーを必要としない、あるいはニューマネーの方がまだましという落ちだ。)
「インデックスへの新規の投資が、割安証券に投資しようとするアクティブ運用者からの償還の結果なされる場合、問題はさらに悪化する。」
実際、過去数年で数兆円の資金がアクティブからパッシブにシフトしたとし、それがバリュエーション以外でも問題を孕んでいるとグリーンライトは指摘している。
しかし、同社の主張はそこではない。
私たちは不満を言っているのではない。
実際、私たちはワクワクしている!
市場が正しく価格発見機能を果たせない時に、なぜバリュー投資家がワクワクできるのか。
バリュー投資とは、不合理な価格を発見し投資し、市場が価格を是正してくれることで儲ける営みだったはずだ。
それが望めない今どう儲けるのか。
それこそが、アインホーン氏が最近言い続けている発行体からの回収にあるのだ。