ブリッジウォーター・アソシエイツのグレッグ・ジェンセン氏がダボス会議で語った話の中にユニークな視点があったので紹介しよう。
自己満足気味になっている点が先行きのリスクだ。
特に米国では、何に対してもほとんどリスクプレミアムが織り込まれていない。
FRBのレポファシリティにより大量の流動性が供給され、他の資産が売却されることなく大きな財政赤字が吸収されてきたためだ。
ジェンセン氏が16日の座談会で語った内容がブリッジウォーターから公表されている。
同氏は、FRBによるレポファシリティによる資金供給、財務省による短期側での資金調達が、量的引き締めの規模を上回り金融市場を安定させてきたと指摘する。
米10年債利回りは昨年春から上昇し、秋口から4%を超えて上昇する局面があった。
10月半ばにピークアウトし、年末には4%超の水準に戻っている。
(秋口から年末にかけS&P 500は鏡写しの動きをした。)
銀行破綻があっても、米国債需給の懸念があっても、当局はうまく抑え込んできたと言える。
ただ、レポファシリティにしても短期調達にしてもいつまでも続けられる性質のものではない。
危うさのある中で、ジェンセン氏は、市場が当局を過信していると示唆する。
「米政策当局はいつもほぼ制約なくほぼ完全だとの考えが外挿されている。・・・
市場には完全な状況が織り込まれている: インフレ低下により景気後退なしに利下げが可能などだ。」
シナリオが完璧すぎるだけに心配との考えだ。
いい方に転ぶより悪い方に転ぶ確率が高くなっていると感じているのだろう。
ここで、ジェンセン氏は、完璧なシナリオを突き崩しうるトリガーとして経済以外の要素を挙げている。
米国で吹いている「2つの冷戦」(米中の対立、国内の分断)だ。
こうした地政学的あるいは政治的なイベントが市場の想定を狂わせる可能性があると考えているのだ。
さらに、もう1つユニークな市場攪乱要因に言及した。
ブリッジウォーターでは以前から業務の自動化に努め、最近ではAIを用いたファンド組成を準備している。
ジェンセン氏も「AIに深くかかわりAIの力に強気」と語っているが、同時に異なる角度でのAI利用について心配している。
(AIの)もっとも容易な使い道は破壊目的だ。
今年は、サイバーセキュリティでの破壊目的、政治的ハッキングでの破壊目的において、AIが最も使われる年になるだろう。
過去1年半でAIの力は大きく変化し、極めて破壊的な行為が容易になった。・・・
完璧な価格の世界で間違いなく考慮すべき点だ。