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マイク・ウィルソン-モルガン・スタンレー ベータではなくファクター/セクター選別が重要:モルガンスタンレー

モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏は、しばらく米市場が逆風を受け続けると予想し、従前どおりファクター/セクター選別が重要になると話している。


一番重要だったのが10年債利回りだった。・・・
私たちは株価評価にとって4.5%が重要な水準と見ていたが、思ったとおり、FRBが12月のFOMCでハト派的傾向を減じると利回りが4.5%のしきい値を超え、株式と債券利回りの相関は負の領域に転換し、今も続いている。
つまり、過去2年株式リターンの主たるドライバーだった債券利回りは、もはや高いバリュエーションを支える側でなくなった。

ウィルソン氏が自社ポッドキャストで、昨年12月からの米国株の停滞について要因を振り返った。
以前は米株価を押し上げる要因になっていた長期金利が、4.5%を境に逆風になったとの観察だ。
以降、米株価の主たるドライバーは金利から企業利益に変化し、「予見可能な将来もそうあり続けるだろう」という。

米市場にかかわる話を聞いていて興味深いのは、特に慎重派の中に企業利益を重視する人が多い点だ。
一方の強気派の人々には、関税など政策の不確実性を重視する人も多い。
(例えば、政策の失敗さえなければ大丈夫といったような楽観。)
同じ人が時によって別の点にハイライトを当てることさえある。
投資家は様々な表現によって過度に引きずられないよう注意しないといけない。

FRBがハト派色を後退させたこと、関税の不確実性、物価統計などを理由に、モルガン・スタンレーでも年内利下げ予想を市場予想と同様、6月に1回(25 bp)にとどめているという。
つまり、年内の金融環境面での恩恵はそう大きくないということであり、企業利益がいっそう重要と言いたいのだろう。
このため、同社は投資戦略についてもファクター/セクター選別に集中し、上方修正の多い分野に注目しているという:

  • 金融、メディア/エンタメ
  • 半導体よりもソフトウェア(DeepSeekショックを意識したものだろう)
  • 消費向けは、財よりもサービス(関税を意識したものだろう)
  • ディフェンシブでは、必需品・REIT・ヘルスケアよりも公共

また、従来から推奨していたクォリティ株についても、少し詳しく語っている。

「経済成長が大きく損なわれることなく10年債利回りが持続的に4.5%未満に低下するまで、大型クォリティへの強い選好を継続する。
株式バリュエーション上注視すべき10年債利回りの要素は引き続きタームプレミアムだ。」

タームプレミアムとは、投資家が予想する将来の期待短期金利の合成に対し、投資家が上乗せするリスクプレミアムのこと。
期待金利自体は経済成長と同期する部分も多いため大きな悪さはしないが、上乗せ分については株価にマイナスの影響が及びがちだ。
ウィルソン氏は、このタームプレミアムが一時ほどではないものの高止まりしている点に警戒している。

この日ウィルソン氏は、金利、企業利益の次にトランプ政権の政策を語った。

  • 関税: 影響が大きくなりうるのは中国向け一般消費財、エレクトロニクス。
  • 移民政策: 需要減と労働コスト。
  • 政府効率化省DOGE: 効果に疑問の声がある。支出削減が実現しても短期的にはマイナス要因。

いずれの政策も、少なくとも短期的には景気・市場の足を引っ張る面がある。
ウィルソン氏は従前、年後半以降によい影響が効き始めると話してきたが、今もS&P 500の年末目標を現在よりやや低い6,100に据え置いている。

「長めの金利の上昇、ドル高の逆風、政策変更の当初の影響を考えると、今は株価倍率にキャップがかかっている。
これが意味するのは、単にポートフォリオのβを高めるのではなく、株式のファクター/セクターを選別することがパフォーマンスにとって重要であり続けるということだ。」


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