アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、Top Traders Unpluggedのインタビューを受けている。
いつもながら意地悪なほどの箴言に満ちており、いくつか紹介しよう。
「NVIDIAに強気か」と問われて
「私にはbullish(強気)、bearish(弱気)がどういう意味かさえ分からない。
・・・強気・弱気という言い方は、判断できないことをオシャレに言うにすぎない。」
ダモダラン教授の投資とは、株式の価値(バリュー)を評価し、価格がそれより安ければ買うというバリュー投資だ。
株式や発行体に対する強気・弱気は最終的な判断基準ではない。
FANGAMなどに上昇が集中したことの教訓
「これまでずっとトップ12-20銘柄なしに投資していたら市場に取り残される運命だったが、過去20年間が異なるのは、主役が変わらなかったことだ。
・・・投資について集中戦略を採っていたら・・・古いバリュー投資による集中には大きな赤信号が灯る。
勝ち組の1つに集中するならすばらしい結果になるだろう。」
ダモダラン教授は、新たなテクノロジー/事業モデルが出現し、勝者が総取りするケースが増え、勝者が固定したと推測する。
古いバリュー投資・小型株投資は投資哲学に基づき高PER銘柄を避けてきたため、市場の上昇に乗り損ねたと分析。
教授は、頑なな投資スタイルを避け、市場全体を視野に入れてきたと話している。
ダモダラン教授は、ウォーレン・バフェット氏が投資家にインデックスファンドを奨めた一因もここにあると解説している。
「(バフェット氏が)込めたメッセージとは『私のスタイル/戦略は前世紀のもの』ということだったのだろう。」
バリュー投資の勝機
「投資の世界はフラットになった。
1980年代にアクティブ運用者が有していた優位のうち何が残っている?」
ダモダラン教授は、かつては一部のプロが独占できていたデータやコンピュータが広く普及したことを指摘した。
ベンジャミン・グレアムによるスクリーニングだって今では2分で出来る。
・・・これで持続的に勝てるはずがない。
・・・古いバリュー投資の多くは怠惰だ。
銘柄のスクリーニングだけで、決して株価評価を行わない。
DCFは、発行体や環境の将来予測から始まり現在価値計算で完成するが、その過程に様々なパラメーター、変数が投入される。
その1つ1つの妥当性を検証しつつ株価評価を行うダモダラン教授からすれば、PERだけで判断しようとする「怠惰」な投資家は問題外なのだろう。
(次ページ: 古きバリュー投資よさらば)