怠惰なバリュー投資
「『何かが上がりすぎたら、きっとばかげているためだから、売ろう。』
これこそが、過去20年間バリュー投資を破壊してきた戦略だ。」
ダモダラン教授は、こうした投資行動が2012年頃からFANGAMで見られてきたという。
(ジム・チャノス氏やデービッド・アインホーン氏が念頭にあるのだろうか。)
もちろん、こうした行動は売り方に大きな損失を負わせることとなった。
「単にモメンタムに逆行するだけではバリュー投資家にはなれない。
これら高みにある企業の価値を実際に評価するなら『35倍のPERは高すぎる』などと言わず、成長率や大きなストーリーを教えてほしい。
・・・それがバリュー投資にはできていない。」
《バリュエーション学長》からすれば、PERは主たる判断基準ではない。
確かにバリュー投資家の中にこうした怠惰なスタイルの人がいるのは間違いない。
しかし、ではグロース投資家はもっときちんとやれているのかといえば、そうでもないだろう。
実際、すべての銘柄に対し(形だけでなく)精魂込めたDCFをやっている投資家は数えるほどしかいないのではないか。
しかし、この日も教授の矛先はもっぱらバリュー投資家に向かうのだった。
「道徳的で極めて儀式的」なバークシャー・ハザウェイの株主総会
ダモダラン教授は、古いスタイルのバリュー投資について、もはや有用でないと考えている。
ただし、もちろんウォーレン・バフェット氏らバリュー投資の先達を貶す意図はない。
しかし、今回教授は、毎年オマハに集うバフェット・ファンたちを完膚なきまでにディスる暴挙に出ている。
「バリュー投資家から聞かれるのは、
『私たちは選ばれし者で、勤勉、大人だ。・・・
トレーダーは浅い、テック投資家は浅い。』
《正しい》ことの問題点は、正しいことをすれば報われると考えることだ。」
微笑ましいほどのディスり方だ。
バフェット・ファンに代表されるバリュー投資家たちの持つ説教臭さがいやなのだろう。
いやいや、それだけではない。
ダモダラン教授は、「正しければ報われる」と信じる投資家は、うまく行かなかった時に金銭と精神の両面で傷つくことになると心配する。
しかも、モメンタム株をショートした場合に、当てがはずれても白旗を挙げるタイミングが遅れる傾向があるとも指摘している。
マグニフィセントセブンのすべては過去15年で少なくとも2-3回は割安だった時があった。
・・・(Mag 7の)すべての銘柄は各々の時点で割安であり、その時私は買う判断をした。
ダモダラン教授は、これはと思う銘柄を継続的に注視し、定期的に株価評価しており、投資家にもそれを奨めている。
長く注視することで理解が進むだけでなく、一般に割高と思われている銘柄でもチャンスがやって来ると考えているのである。