ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏は、中国が債務問題への対応を怠れば、長きにわたって経済問題を抱え続けると警告している。
数年前、習近平主席は、100年に一度の大嵐がやって来ると言い始めた。
ハリケーンの初めの数日に典型的なことだが、今それが感じられる。
ダリオ氏が自身のブログで、中国に100年に一度の大変化が起こりつつあると書いている。
同氏のブログには刺激的なコメント・予想が並ぶが、ここでは経済・市場に関する部分を紹介しよう。
言うまでもなく、現在中国が直面する債務問題だ。
これが、不動産・株式ほか資産・雇用・賃金の重しになっているという。
企業や地方政府の債務・財政問題を適切に対処しなければ長期間悪影響を及ぼし続けるとという。
ダリオ氏は、金融緩和だけで現状の中国経済を救うことはできないとし、そうすればバブル後の日本の二の舞になると警告している。
政策決定者が信用創造を増やすために金融緩和すべきと考える人は多いが、信用と債務を増やすことはアルコール中毒の禁断症状を緩和するためにアルコールを与えるようなものだ。
中国は、債務削減というデフレ的手法とインフレ的手法をバランスさせるよう
1) デレバレッジ(デフレ的、景気抑制的であり、債務負担を減らす)
2) 金融緩和(インフレ的、景気刺激的であり、債務負担を和らげる)
を企図しなければいけない。
債務問題が発生した時、対処には大きく2つある。
1つは金融緩和/債務貨幣化で各経済主体の首が締まらないにすることだが、これは言わば延命措置でしかなく、根本的な解決にはならない。
しかも、債務危機の中で金融緩和を強めれば、通貨危機に発展しかねない。
これがインフレ的対処法だ。
また、財政政策(富の移転)もインフレ的だろう。
もう1つがデレバレッジ。
典型的には債務リストラ/デフォルトだ。
これは貸し手側に血が流れ、デフレ的影響を及ぼす。
また、緊縮財政もデフレ的手法だ。
(参考: 弊社著『超長期サイクルが終わる時』でも言及)
ダリオ氏は以前から、これらインフレ的・デフレ的、双方の手法を組み合わせ、インフレにもデフレにもならない形で債務問題を軽減するよう提言し、それを「美しいデレバレッジ」と呼んできた。
一方で、これらが困難をともなうことも認めている。
いずれの政策も大きく得をする人、損をする人があり、それが社会的・政治的不和を生み出しかねないからだ。
(日本のバブル後でも、失敗者の債務を免除することへの反対が大きく、10年近く十分にインフレ的手法が取れなかった。)
ダリオ氏はすでに遅きに失したと考えているようだ。
「私の意見では、これを2年前にやらなければいけなかった。・・・
指導部が美しいデレバレッジを実行しなければ、中国はマルクス主義的特徴を有する、日本型の失われた10年を迎えるだろう。」
ダリオ氏は、ヘッジファンド業界でも屈指の中国通だ。
誰よりも早く中国に興味を示し、ブリッジウォーターは外資系ヘッジファンドによる中国ビジネスでトップを走っている。
少し前さかんに中国を推奨した時期があったが、折り悪く中国が風邪を引き、会社としては大幅にトーンダウンしている。
それでもダリオ氏は中国に強気のスタンスをアピールしている。
中国の良質な資産にとても魅力的な価格がついている。
私は中国への投資でうまくいっている。