国内経済

モハメド・エラリアンは日銀審議委員の講演をどう読んだか?

アリアンツ主席経済顧問モハメド・エラリアン氏が、日銀政策委員会審議委員 安達誠司氏の29日の講演を引用し、コメントしている。
その引用と解釈を見てみよう。


エラリアン氏が印用したのは2か所。
同氏はロイターで読んだらしいが、ここではより正確であろう日銀の挨拶要旨から引用する。

「金融政策が前のめりになりすぎることで、折角のわが国経済が回復する機運に水を差すといった『拙速な利上げ』は絶対に避けなければなりません。
・・・ただし、あまりにも下振れリスクに配慮しすぎると、物価上昇のペースが加速して、結果としてより急激な金融引き締めの実施を余儀なくされ・・・」

「円安が加速、もしくは長期化することで、想定しているよりも早いタイミングで消費者物価の上昇率が反転する可能性がある点です。
また、その時点において、先行き『持続的・安定的な物価上昇』が2%を上回る可能性がより強まっている場合には、利上げを行うことで金融緩和度合いを調整するペースを早める必要性があるかもしれません。」

いずれも極めて合理的な一般論、考え方であろう。
これを高名なエコノミスト/投資家はどう読んだのか。

ドル円がじりじりと157円水準に戻るにつれ、日銀の安達誠司審議委員によるこれら興味深い発言(ロイター報)は、スポットライトを潜在的な為替介入から利上げ前倒しへの積極性にシフトするのを助けている。

エラリアン氏は安達氏の発言を、利上げへの積極性と受け取ったようだ。
金融緩和継続によるインフレ圧力、金融緩和から円安を経由したインフレ圧力がその理由だ。
ただし、為替レートから書き始めているところを見ると、後者に注目しているのだろう。

皮肉なことだが、日本の場合、金融政策では行き過ぎた円安に対処できない。
日銀が短期の政策金利を引き上げるといっても、せいぜい1%だろう。
短期金利を引き上げれば長期金利もある程度連動するかもしれない。
すでに長期金利は1%を超えており、短期金利引き上げでさらに長期金利が上昇すれば、(数年のうちに)予算さえ組めなくなりかねない。

もちろん、為替介入にも円安を食い止める本質的な力はない。
特に、ドル売り介入には底があり、市場に狙われないよう、極力控えるべきだ。
当面、円安ドル高の要因は強い。
これを短期的にひっくり返すとすれば、米経済が急転直下悪化するか、米政府が為替について得意の無理筋の押し付けをし始めるぐらいしかないのではないか。
いやいや、もちろんみんなが気づいていない可能性が無数にあるはずだ。
ただ、そうした可能性に共通するのは、日本の当局が能動的にやれることが短期的にほとんどないという点だろう。


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